研究課題/領域番号 |
15H03646
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
大石 雅寿 国立天文台, 天文データセンター, 准教授 (00183757)
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研究分担者 |
廣田 朋也 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (10325764)
野村 英子 東京工業大学, 理学院, 准教授 (20397821)
尾関 博之 東邦大学, 理学部, 教授 (70260031)
小林 かおり 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (80397166)
齋藤 正雄 国立天文台, TMT推進室, 教授 (90353424)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電波天文学 / 分子分光 / アストロバイオロジー |
研究実績の概要 |
観測チーム:星間グリシンをALMA望遠鏡で観測するためのプロポーザルが大変高い評価を得て採択される、また、核酸塩基の前駆体であるピリミジンの観測提案も採択される等本研究が目指す目標に向けて順調に進んでいる。これまでに、宇宙空間におけるグリシンの生成経路をちら部、グリシンの直接の前駆体の一つであるメチルアミンは星間塵表面反応によって生成されることを明らかにした結果は、Astrophysical Journal誌に査読論文として出版した。
分光チーム:グリシン前駆体の一種と考えられているヒダントインの分光学的同定を進めた。その結果振動基底状態に加え、比較的低エネルギーと考えられる二種類の振動励起状態を帰属した。これらは天文観測的にも重要であると考えられたため、第一原理計算により振動モードおよび振動エネルギーの推定を行った結果とともに、学術論文として報告した。また、メチル基の内部回転を有する基本的な星間分子(同位体)の研究(CD3SHを投稿中で、HCOO13CH3のvt=2を投稿準備中)も進めた。
理論チーム:原始惑星系円盤内において塵表面反応により複雑な有機分子が生成される。そのなかでもメタノールは表面反応によってさらに複雑な分子を生成する素となる分子と考えられている。我々は、塵表面から気相に光脱離したメタノールの観測可能性を予測し、実際にALMAを用いて、円盤からのメタノールを初検出した。観測されたメタノールは円盤外縁の低温領域に存在し、また、観測されたメタノールと水の比が彗星のものと一致することから、塵表面で生成されたメタノールが光脱離したものであると考えられる。また一方で、塵表面反応や氷マントル反応の実験的研究を行っているエクス・マルセイユ大学のTheule氏とともに、非ラジカル同士の反応による有機分子生成の実験に基づく、化学反応ネットワークの構築に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観測、分光、理論チームのいずれも、目標としている進捗が見られる。 観測チームは星間グリシンをALMA望遠鏡で観測するためのプロポーザルが大変高い評価を得て採択される、また、核酸塩基の前駆体であるピリミジンの観測提案も採択されるなど本研究が目指す目標に向けて順調に進んでいる。分光チームは、昨年度測定に成功したグリシン前駆体の一つであるヒダントインの結果を査読論文として出版した他、同じく五員環であるイソキサゾールの論文化作業が進んでいる。理論チームは、生命素材物質の多くが生成されると考えられる星間塵表面などにおける、これまでに研究されていない非ラジカル同士の反応を考慮した化学反応モデルの構築に取り組んでいる。 これらの結果は、査読論文として出版する他、関連学会や研究会等において論文発表し、成果を広く伝えることに努力した。
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今後の研究の推進方策 |
観測チーム:ALMAによる星間グリシン探査のデータは平成29年度初頭にデータが配付される予定であるので、このデータを詳細に解析することを通じ、星間グリシンが存在するか否かを解明する。同時に取得される多様な有機分子の空間分布等についても論文にできるものであるため、研究分担者や研究協力者が共同してデータ解析を進める。国立天文台45m望遠鏡による星間ピリミジンの観測は、望遠鏡の故障のために本年度に延期となっているが、本年秋頃には観測できる見込みである。この観測を推進し、星間空間において核酸塩基の前駆体が存在しえることを明らかにしたい。これらの信号強度は弱いと思われるため、スタッキングアナリシスを導入しS/N比を上げる方策を検討する。
分光チーム:ヒダントインとともにグリシン生成の前駆体になりうる、アミノメタノール(NH2CH2OH)の分光学的同定を試みる。現在、分子構造および永久双極子の大きさを計算中であり、これらの予想値を基に、ミリ波帯における探索を開始する。また昨年度より、新たにセンチ波帯の分光計(フーリエ変換型マイクロ波分光計)の立ち上げを進めている。これが稼働すれば、観測対象の分光定数の精度が飛躍的に向上するものと期待している。これまでに測定に成功したイソキザゾール、オキサゾール等の論文化を進めるとともに、出版された論文のデータを順次、オンラインアトラスに掲載してゆく。チャープパルス・フーリエ変換型マイクロ波分光計が稼働し始めので、こちらも併用した研究を進める。
理論チーム:これまでに培った国際共同研究の枠組みを活用しつつ、引き続き化学反応ネットワークの構築に取り組み、原始惑星系円盤の氷蒸発領域における有機分子生成を明らかにする。
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