研究実績の概要 |
本研究が目指す目標はテンソル繰り込み群の4次元QCDへの応用である. その目標に向けて設定された3つのサブ課題は, [1]非可換ゲージ理論への拡張, [2]高次元モデルへの応用, [3]物理量計算のための手法開発, である. 平成29年度は, 連携研究者との協力し, これまで取り組んでいる3つのサブ課題の研究開発を継続した. サブ課題[2]高次元モデルへの応用に関しては, 着実な研究開発成果が得られている. 平成28年度よりグラスマン数を扱うことのできる高次元(3次元以上)向けアルゴリズムの開発を行い, 平成29年度は3次元自由ウィルソンフェルミオンの分配関数計算によりその有効性を実証した. また, サブ課題[3]物理量計算のための手法開発に関しては, フェルミオンを含む物理システムでのグリーン関数の計算手法開発に成功した. 実際に, その計算手法を3次元自由ウィルソンフェルミオン系での1点および2点グリーン関数の計算に応用し, 解析解を再現することを確認するとともに系統誤差について考察した. サブ課題[1]非可換ゲージ理論への拡張に関しては, われわれは今のところ2次元シュヴィンガーモデルの計算に成功している. 即ち, フェルミオンが入った可換U(1)ゲージ理論の定式化および実証計算が完成している. また, 純粋なゲージ理論(フェルミオンを含まない)に関しては, 現在3次元Z2ゲージ理論の新たな定式化およびアルゴリズム開発に取り組んでおり, 有望な結果が得られている.
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