研究実績の概要 |
H27年度から本格的に始動した、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam (HSC) 深宇宙イメージング(撮像)サーベイを念頭に、その宇宙論統計量からダークエネルギーなどの宇宙論パラメータを制限する手法を開発している。イメージングサーベイから銀河像を精密に測定することにより、手前のダークマターの空間分布を復元することができる。一方、銀河の分光サーベイは各々の銀河までの距離を測定することを可能にし、銀河の3次元分布で宇宙の大規模構造を探る強力な手段である。同じ天域領域のイメージングと分光サーベイを組み合わせることで、着目する銀河まわりのダークマターの分布を明らかにすることが可能になり、いわゆる銀河のバイアス不定性を観測的に除去することができる。H27年度は、このイメージングと分光データを組み合わせた宇宙論の解析法を開発し、実際のCanada-France-Hwaii Telescope (CFHT)イメージングサーベイとスローン・ディジタル・スカイ・サーベイ (SDSS)の分光データに適用し、宇宙論パラメータを制限することに成功した (Miyatake, More, Takada et al., 2015, ApJ, 806, 1; More, Miyatake, Takada et al., 2015, ApJ, 806, 2)。この研究では、銀河の星質量で選択した複数の銀河サンプルで同様の解析を行った。星質量で選択した銀河に関係なく、つまり異なるタイプの銀河についても、それぞれの重力レンズ効果の測定により、銀河バイアス不定性を除去することにより、宇宙論パラメータの制限がその影響を受けないことを定量的に示した。すばるHSCサーベイについても、この手法を適用し、宇宙論パラメータを制限する予定である。
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