研究実績の概要 |
H27年度から本格的に始動した、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam (HSC) 深宇宙イメージング(撮像)サーベイを念頭に、その宇宙論統計量からダークエネルギーなどの宇宙論パラメータを制限する手法を開発している。イメージングサーベイから銀河像を精密に測定することにより、手前のダークマターの空間分布を復元することができる。一方、銀河の分光サーベイは各々の銀河までの距離を測定することを可能にし、銀河の3次元分布で宇宙の大規模構造を探る強力な手段である。同じ天域領域のイメージングと分光サーベイを組み合わせることで、着目する銀河まわりのダークマターの分布を明らかにすることが可能になり、いわゆる銀河のバイアス不定性を観測的に除去することができる。H28年度は、このイメージングと分光データを組み合わせた宇宙論の解析法を開発し、スローン・ディジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)データに適用した。その結果、宇宙最大天体である銀河団のダークマターハローについて、ダークマター粒子の軌道が閉じている自己重力領域、その周辺の宇宙構造の境界領域を明らかにすることに成功した(More, Miyatake, Takada et al. 2016, ApJ 825, 39)。また、上記のすばる望遠鏡HSCプロジェクトのデータを用い、サイエンスの成果を出しつつある(例えば、Honma et al. 2016, ApJ 832, 21)。特に、HSCサーベイデータを解析し、サイエンスにすぐに使える形での天体カタログ(星、銀河)、物理量測定量(位置、各フィルターでの光度、形状など)を2017年2月28日に全世界に公開することに成功した。HSCデータを用いた宇宙論解析の準備が整いつつある。
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