研究課題/領域番号 |
15H03655
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大西 宗博 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (10260514)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 宇宙線 / ガンマ線天文学 |
研究実績の概要 |
中国チベット自治区の羊八井宇宙線観測所では、シンチレーション検出器を 7.5 m 間隔に配置した、広視野宇宙線望遠鏡チベット空気シャワー観測装置が平成2年から稼働している。この装置と平成25年に完成し、現在最終調整段階にある世界最大 (3,200 ㎡) の地下水チェレンコフ型ミューオン検出装置を連動し、空気シャワー中の電子数とミューオン数を同時観測することにより、100 TeV 超領域の宇宙ガンマ線を超低雑音で観測する研究計画である。宇宙ガンマ線観測の雑音となる原子核宇宙線が空気中で生成する空気シャワーにはミューオンが多数含まれるが、宇宙ガンマ線が空気中で生成する空気シャワーにはミューオンがほとんど含まれない。従って、ミューオン観測装置によりミューオンの数を計測することにより、原子核宇宙線による雑音と宇宙ガンマ線を効率的に弁別することが可能となる。 本研究で使用する水チェレンコフ検出器の 1 単位の面積は約 50 ㎡ であり、水深 1.5 m の水の中に 20 インチの光電子増倍管 (PMT) を 2 本下向きに取り付け、荷電粒子から放出され床や壁で反射するチェレンコフ光を検出する。この検出器は地下 2.5 m に作られている。これにより約 1 GeV 以上のミューオンを効率よく検出できる。水チェレンコフ検出器の総数は 64 単位であり、空気シャワー観測装置の中心部に 4 クラスターに分けて設置されている。この装置による宇宙ガンマ線の検出感度は、数 10 TeV 以上のエネルギー領域では世界最高感度となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は 1. 昨年度に引き続き、連携研究者、研究協力者とともに空気シャワー観測装置と地下ミューオン観測装置のエネルギー及び時間情報の較正を行った。2. 両装置のトリガータイミングの再調整とトリガー統合を行い、3. 観測を再開した。4. 収集された観測データは東京大学宇宙線研究所に送られ、5. 東京大学宇宙線研究所の計算機システムを使用して、連携研究者、研究協力者とともに、データが所定の精度を持っているか確認し、データを解析した。6. ここまでの研究成果をとりまとめ、日本物理学会 第72回年次大会 (2017年) で発表した。 ここまでの進捗はおおむね計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
1. 本年度に引き続き、連携研究者、研究協力者とともに空気シャワー観測装置と地下ミューオン観測装置のエネルギー及び時間情報の較正を行う。2. 観測データは東京大学宇宙線研究所に送られる。 3. さらに標高の高いボリビア・チャカルタヤ観測所 (標高 5,200 m) に滞在し、比較データを取得する。5. 東京大学宇宙線研究所の計算機システムを使用して、連携研究者、研究協力者とともに、チベットでのデータとチャカルタヤ観測所で取得したデータを比較、解析する。5. 100 TeV 超領域宇宙ガンマ放射天体について解析、考察する。6. 研究成果を取りまとめる。
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