研究実績の概要 |
中国チベット自治区の羊八井宇宙線観測所では、シンチレーション検出器を 7.5 m 間隔に配置した、広視野宇宙線望遠鏡チベット空気シャワー観測装置が平成2年から稼働している。この装置と平成25年に完成した世界最大 (3,200 平方メートル) の地下水チェレンコフ型ミューオン検出装置を連動し、空気シャワー中の電子数とミューオン数を同時観測することにより、100 TeV超領域の宇宙ガンマ線を超低雑音で観測する研究計画である。宇宙ガンマ線観測の雑音となる原子核宇宙線が空気中で生成する空気シャワーにはミューオンが多数含まれるが、宇宙ガンマ線が空気中で生成する空気シャワーにはミューオンがほとんど含まれない。従って 、ミューオン観測装置によりミューオンの数を計測することにより、原子核宇宙線による雑音と宇宙ガンマ線を効率的に弁別することが可能となる。この装置による宇宙ガンマ線の検出感度は、数10 TeV 以上のエネ ルギー領域では世界最高感度となる。 本研究ではこの装置を使って、世界で初めて100 TeVを超えるガンマ線が「かに星雲」から到来していることを有意に検出した。また、MGRO J1908+06 からの100 TeV超ガンマ線も有意に捉えた。これら2天体とG106.3+2.7の3天体からの数10 TeVから数100 TeV領域ガンマ線のエネルギースペクトルを観測した。これらの観測結果は100 TeV超領域宇宙ガンマ線の新しい重要な知見であり、100 TeV超領域ガンマ線天文学を切り開くことに成功した。これらの成果は2019年3月の日本物理学会第74回年会で発表し、論文は現在投稿中である。
|