高エネルギー粒子線を用いたCT撮像は、治療用粒子線ビームに対する阻止能の測定において、X線CTよりも原理的な不定性が小さいため、治療の高精度化に有用であると考えられている。本研究では、これまで原理検証を行ってきた粒子線CTについて、飛躍的な高速化を行うことにより、実用的な時間(数分)で撮像を行えるシステムを開発することを目的としている。当該年度は、物質量が少なく二次元の位置が測定できる、両面型シリコンストリップ検出器(DSSD)を導入し、高強度ビームのプロファイルの測定を実現するためのシステム開発を進めた。同時に、エネルギーを測定するためのカロリメータも同等の速度を実現する必要があるため、並行して開発を進めた。 DSSDの読出しは、高速化を実現するためASICを用いてデジタル読み出しボードを作成した。しかし、半導体検出器は信号値が小さく電源電圧の変動に極めて弱いこと、データ収集PCへの接続配線の電気容量の影響を受けやすいこと等の理由から、ノイズヒットが多い状態となってしまっていた。この問題を解決するため、外部トリガーとのコインシデンス回路をボード上に実装し、タイミング条件を厳しく(±150ナノ秒)設定することにより、ノイズヒットを大幅に除去することに成功した。放医研HIMAC加速器SB2ビームラインにおいて測定を行い、エネルギー160MeVで100kHz以上の陽子線ビームに対して、ビームプロファイルを測定することに成功した。 また、時定数の短い発光特性を持つYAP(YAlO_3(Ce) perovskite)結晶にブリーダー抵抗調整し外部電流を供給する光電子増倍管を用いて、高速カロリメータの性能を評価した。このカロリメータは300kHzまでエネルギー分解能2%を維持することができた。
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