研究実績の概要 |
本研究の目的はミューオン異常磁気能率(g-2)精密測定にむけた(1)世界初のミューオン線型加速器の開発、(2)ミューオン加速の実証、(3)ミューオンビームモニターの開発、である。 このうち(1)に関して、当初の予定通り線型加速器全体の基礎設計を終え、論文(J. Phys. : Conf. Ser. 874, 012054, 2017.)として発表した。また、昨年度までの実績(Physical Review Accelerators and Beams, 19,040101,2016)に基づき線型加速器低速部の加速空洞IH-DTLの試作機を設計して製作した。さらに空洞の基本パラメータである共振周波数の測定を行い、設計値と0.1%程度で一致していることを確認した。本測定によって、ミューオン専用線型加速空洞の設計手法を確立したといえる。さらに、APF方式を採用したIH-DTLでビーム品質が悪化した場合の代替案として、CH-DTLならびにアルバレDTLの設計を検討した。これらの代替案でIH-DTLと同等あるいはそれ以上のビーム品質が得られることを計算で示し、成果を論文(J. Phys. : Conf. Ser. 874, 021038, 2017)で発表した。 (2)に関しては初段バンチング加速器(RFQ)のプロトタイプを用いてJ-PARC MLFテストミューオンビームラインにおいて加速の実証試験を行った。そして、世界初のミューオン加速に成功し、成果を論文にまとめて投稿した(PRABに投稿中、arXiv:1803.07891 [physics.acc-ph])。 (3)に関しても、前年までに低速ミューオンで性能を実証したビームプロファイルモニターを用いて加速ミューオンの測定実験を行った。測定結果とシミュレーション結果を比較し、良く合致していることを確認した。本成果は2018年5月に行われる国際学会IPAC2018で発表予定である。 以上より、本研究は当初の予定通りの成果を挙げることができたと結論する。さらに(1)線型加速器の設計に関しては代替案に関しても検討することができたので、当初の予定以上の成果を挙げたといえる。
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