研究課題/領域番号 |
15H03667
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
土屋 清澄 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 名誉教授 (20044787)
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研究分担者 |
増澤 美佳 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (10290850)
多和田 正文 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (30300677)
大内 徳人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (50194080)
菊池 章弘 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (50343877)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 加速器 / 超伝導磁石 / 高温超伝導線材 |
研究実績の概要 |
欧州原子核共同研究機構(CERN)の次期計画として検討が始まったFuture Circular Collider (FCC)用高磁場磁石、米国で検討されているミューオンコライダー用の高磁場磁石、我が国の高エネルギー加速器研究機構で建設が進んでいるSuperKEKBのルミノシティールミノシティー向上用ビーム色収差補正用特殊六極磁石などに向け、第二世代の高温超伝導線材であるREBCO線材を用いた小型コイルの試作・試験を行い、REBCOコイルの基礎的製作技術の開発を進めた。具体的内容は以下の通りである。1)REBCO線材を用いて小型コイルを製作し、そのクエンチ特性を調べ、クエンチ検出条件とコイル最高温度の関係を明らかにするとともに、試作予定の六極磁石用導体に必要な安定化銅量を決定した。2)クエンチ特性試験から得られた線材の安定化銅量を基に試作六極磁石の再設計を行い、この磁石で必要となるコイルの種々のパラメータを明確化した。3)六極磁石用のコイル試作を行い、コイルの寸法精度測定や液体窒素温度での通電試験によりコイル製作技術に重大な問題がないことを確認した。然しながら、コイルの寸法精度を0.1 mm以下とすることは非常に難しいことが判明し、高精度コイルの製作には新たな技術開発が必要であることが明らかとなった。4)将来の高磁場磁石の検討の基礎となるREBCO導体の低温、高磁場下(B < 18 T @ 4.2 K)における臨界電流特性の測定を行った。今年度は種々の線材メーカーから各種サンプルを入手して測定したので、各社の線材の特性比較が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)小型コイルのクエンチ特性試験は、先年度から行っていたため、順調にクエンチ特性の解析を進めることができ、六極磁石用導体に必要な安定化銅量も決定できた。これに従い、六極磁石の再設計も比較的短時間で遂行することができた。2)六極磁石用コイルの試作を開始し、コイル寸法精度の確認や液体窒素温度での健全性チェックを行ったが、一部コイルで不具合が見つかり、作り直す必要が生じた。このため、次年度前半までコイル製作を延長する必要が生じた。3)超伝導線材の臨界電流測定には長年の経験を有していたことから、REBCO導体の低温、高磁場下(B < 18 T @ 4.2 K)における臨界電流特性の測定は比較的順調に進み、7社の市販REBCO線材の特性が明らかとなった。このように、順調に進んだものも遅れているものもあるが、全体としては、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
1)六極磁石用REBCOコイルの試作を続け、最終的には六極磁石を組み上げ、その冷却・励磁試験、磁場特性測定を行ない、REBCO六極磁石の実現可能性を調べることを目標に研究を推進する。2)六極磁石の製作に不可欠なコイル間の導体接続技術の開発として、REBCO線材のはんだ接続法の研究を推進する。3)市販されている各社のREBCO線材の4.2K下での臨界電流特性の測定を継続して行うとともに、線材の微視的構造観察、臨界温度の測定などを進め、各社線材の諸特性を明らかにし、将来の高磁場磁石開発のための基礎的データの収集を進める計画である。
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