本年度は、POLARBEAR-1のおよそ6倍の感度を有するアップグレードレシーバ「POLARBEAR-2」の実験室におけるインテグレーション・基礎特性の評価を完了し、チリへの移設を行なった。3ヶ月間にわたる現地作業を経て、惑星を用いたファーストライト(観測装置が立ち上がり、最初に空を観測したデータ)を達成し、コミッショニング作業を開始した。 コミッショニングでは、まずPOLARBEAR-Iの6倍のおよそ7600個の検出器を有する焦点面検出器アレイを冷却し、実験室と同等の冷却能力を示している事を確認した。さらに実際の観測環境の下、超伝導転移端に設定できる事を確認し、配線されている検出器のおよそ95%の検出器で空からのミリ波信号を検出できている事を確認した。またニュートリノ質量に感度を有する重力レンズBモード信号の検出には、デザイン値通りの角度分解能を達成している事が重要である。レシーバを動かしながら角度分解能が最大になる場所に調整し、十分な分解能を有する事を確認した。実際の観測にはサイドローブと呼ばれる予期せぬ方向からの信号をどれくらい検出しているかの見積もりが重要であり、それは今後の課題である。その他、長期間安定したデータ収集をするのに重要なオンラインでのモニタリングシステムの立ち上げ等を経て、本観測開始への準備がほぼ完了している。これらの経緯の詳細については論文等にまとめられている。またPOLARBEAR-1の観測データを用いて、重力レンズ・インフレーション起源の信号検出を目指した大角度スケールのBモード信号探索に関する新しい結果を公表した。
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