研究課題/領域番号 |
15H03673
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野村 晋太郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90271527)
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研究分担者 |
三沢 和彦 東京農工大学, 工学研究院, 教授 (80251396)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 二次元電子系 / 光照射効果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は外部から完全にコントロールされた光の強度、偏光および位相情報を二次元電子系の軌道角運動量とスピンへ転写し新たな量子状態の制御手法を確立することである。最近開発された近赤外フェムト秒パルスからベクトル波形整形ねじれ偏光パルスを発生させる手法を用いて、試料にヘリカルTHz波を局所照射するシステムを開発する。 本年度は、ベクトル波形整形ねじれ偏光パルスの局所励起のためのシステムを筑波大学にて新たに開発した。既設のフェムト秒モード同期チタンサファイアレーザからのパルス光を透過型回折格子で分散させたのち、本年度導入した液晶空間光変調器に入射して垂直面に対して+45°、ー45°の二つの直交する偏光の位相を各波長成分に対して独立に制御するセットアップを構築した。分散されたパルス光は再度透過型回折格子を透過させて元のビームに戻した。このパルス光をマルチチャンネル光検出器付きの分光器でモニタして各偏光、周波数成分の位相差をそれぞれ較正し、二次分散と遅延をコンピュータによって制御により補正を行うシステムを構築した。ベクトル波形整形後のパルス光の時間軸における包絡線波形の評価のために偏光分割相互相関法を用いた。ポンプ光とプローブ光との間の和周波発生を用いた相互相関を任意偏光角度に対してとるためのセットアップと、顕微鏡対物レンズを用いた局所光励起のためのセットアップを構築した。以上のセットアップを用いて周波数チャープと偏光の乱れを解消することを試みた。さらに、光照射を行う対象となる二次元電子系としてGaAs単一ヘテロ接合試料、および遷移金属ダイカルコゲナイド試料を作製し、その電気的特性と光照射効果の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ベクトル波形整形ねじれ偏光パルスの局所励起のためのシステムを新たに開発し、光照射を行う対象となる二次元電子系の作製に着手することであった。実際1)既設のフェムト秒モード同期チタンサファイアレーザからのパルス光を透過型回折格子で分散させたのち、本年度導入した液晶空間光変調器に入射して二つの直交する偏光の位相を各波長成分に対して独立に制御するセットアップを構築し、顕微鏡対物レンズを用いた局所励起のためのシステムを構築した。2)光照射を行う対象となる二次元電子系としてGaAs単一ヘテロ接合試料、および遷移金属ダイカルコゲナイド試料を作製し、その電気特性と光照射効果の評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
当初研究計画書に基づき、前年度までに開発したベクトル整形ねじれ偏光パルス光を発生させる手法を用いて二次元電子系の局所励起効果の解明の研究を実施する。フェムト秒モード同期チタンサファイアレーザからのパルス幅Δtの近赤外光パルスは1/Δtに比例したスペクトル幅Δνの拡がりをもつ周波数成分をもつ。このパルス光を波長分散し、反射型空間光変調器に入射することにより二つの偏向方向の各周波数成分の位相を独立に制御する。その結果直線偏向の向きが時間の関数でTHzの周期で回転する偏向がねじれたパルス光を発生させる。この近赤外波長領域のベクトル波形整形ねじれ偏光パルスを試料に局所励起し、誘導ラマン過程により二次元電子系試料にTHz帯の励起を行う手法の開発を行う。また、そのための、二次元電子系試料の作製と評価を行う。
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