研究課題/領域番号 |
15H03677
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
水野 清義 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (60229705)
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研究分担者 |
柚原 淳司 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10273294)
中川 剛志 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (80353431)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 表面構造解析 / 低速電子回折 / 電界放出電子線 / 電界誘起ガスエッチング / 2次元超薄膜 |
研究実績の概要 |
複雑な表面構造の解析に対応できる電界放出電子線源を用いた低速電子回折装置の開発のため、新しい装置の設計・製作に取り組んでいる。H27年度、低速電子回折パターンを観察するメインチャンバと、電界放出電子源を準備するサブチャンバを立ち上げた。H28年度は、メインチャンバにおいてシリコン清浄表面とSiC上のグラフェン表面を丁寧に調整し、設置したマイクロチャンネルプレート付低速電子回折装置によりシャープな低速電子回折パターンを観察し、熱電子を用いた場合の回折スポットの半値幅を測定した。サブチャンバでは、タングステン針の先端を電界誘起ガスエッチング法および電子線衝撃法により先鋭化し、低引出電圧で広がり角の小さな電子ビームを電界放出させる条件を調べた。さらに、これら2つのチャンバをドッキングさせて、タングステン針を真空装置内で受け渡して、低速電子回折装置の電子源として使えるようにした。回折パターンは電子銃の前に取り付けた鏡で反射させ、横方向に取り付けた窓から観察できるようにした。これまでに、タングステン針からの電界放出電子線が試料へ到達することを確認できた。これらの実験と並行して、SiC上の酸窒化シリコン膜の超高真空中での作製を試みた。その結果、シリコン吸着、一酸化窒素および酸素雰囲気中での加熱により、酸窒化シリコン膜の作製に成功した。また、銅基板上の鉛とビスマスの共吸着構造、および、ロジウム基板上のセリアやアルミニウム基板上のスタネンの構造解析を試みた。いずれの構造も低速電子回折法を用いた構造解析により決定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り2つのチャンバそれぞれの性能確認を行ったうえで、それらのドッキング作業が完了した。これまでに、サブチャンバで先鋭化したタングステン針をメインチャンバに移動させ(大気開放することなく)、この針からの電界放出電子線をマイクロチャンネルプレート付低速電子回折装置の電子源として使用し、試料に電子線が到達することを確認できた。今後、試料表面からの回折パターンの観察を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
試料に電子線が到達することまでは確認できているので、今後、電界放出電子線を用いた低速電子回折パターンの観察を試みる。針先端の先鋭化を十分に行うとともに、電子銃に取り付けてある2つのコイル、偏向電極、および、レンズ系の最適化を行って、回折パターンが最もシャープになる条件を見出す。得られた回折スポットの半値幅と、昨年度測定したシリコン清浄表面及びSiC上のグラフェンの回折パターンのスポットの半値幅の比較を行う。表面構造解析のためには、電子線のエネルギーを変化させて回折パターンを測定する必要がある。このため、100 eV程度から500 eV程度までの電子線エネルギーの範囲で回折パターンが鮮明になるようにレンズ等の設定条件を調節する。最終的には、設定をコンピュータ制御で行い、回折スポット強度―電子線エネルギー曲線を自動で測定できるようにする予定である。
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