研究課題/領域番号 |
15H03679
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
杉崎 満 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20360042)
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研究分担者 |
近藤 政晴 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20571219)
出羽 毅久 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70335082)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超解像度顕微鏡 / 光合成 / 光物性 / ナノテクノロジー / 量子光学 / 生物物理 |
研究実績の概要 |
本研究では,光合成細菌の光合成膜中で行われる光合成初期過程を可視化するために,光学顕微鏡の回折限界を超えた空間分解能で画像取得することを目指している.その際,超短パルスレーザーを用いることにより,最終的には時間分解顕微画像を得る.超解像度顕微画像を得るためには,照射する二色のレーザー光について最適な波長を選択する必要がある.電子励起状態にある試料を誘導放出過程を経て基底状態に戻すためには,レーザーのエネルギーを最低励起状態より低く設定する.これにより超解像度顕微画像が得られることは,前年度までに行った標準試料を用いた研究で確認済みである.しかし本年度の研究において,レーザーの波長を変化させると,蛍光の(失活ではなく)増加が起こることを見出した.蛍光スペクトルの波長依存性やラマン散乱測定,さらにはブラウニアン振動モデルを用いたスペクトル密度の決定を行った結果,蛍光の増大は,電子の基底状態に結合した核の高い振動準位から,電子励起状態へ励起された結果現れるアンチストークス蛍光に起因することが分かった.このことはすなわち,光合成膜の超解像度画像を得るための波長選択域は非常に狭いことを意味している. また,時間分解画像を得るための条件を決定するために,代表的な光合成色素であるβ-カロテンの時間応答を調べた.ここでは,励起光の位相を変化させた際に顕微画像にどのような変化が現れるか(言い換えると光合成過程の人為操作が可能であるか)を調べることを念頭に置いている.単調な正チャープや負チャープを与えたところ,特に負チャープの時にエネルギー伝達の効率が落ちる可能性があることが分かった.現在のところ,励起状態のポテンシャル形状を反映するためと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験装置のトラブルが発生し修理が必要となったこと,および当初予想したよりも,測定条件が狭い範囲にあることが明らかとなったため,測定装置の構成を変更する必要が生じたため.
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今後の研究の推進方策 |
計画に多少の遅れは出ているが,基本的には当初計画通りに進める.またごく最近,試料の劣化についてさらに注意を払うことが良質な顕微画像を得るためのカギであることが分かってきている.そのため,試料の調製方法についてさらに工夫を加えることを計画している.
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