研究課題
ブリッジマン法により育成したFe1-xCoxSi結晶にラゲールガウスビームを様々な条件で照射し、そのカイラリティドメインを放射光X線で顕微観察することにより、試料結晶への光角運動量移行の影響をコンビナトリアル評価した。これにより、試料結晶に変化が生じるレーザー光照射条件の絞り込みに成功した一方で、レーザー光が結晶粒界を跨いで照射されることによる測定効率の悪化や解析の困難化等の問題点の存在も明らかとなった。そこで、結晶性の向上を目指して浮遊帯域炉による単結晶育成に着手し、単結晶育成条件の最適化を進め、Fe1-xCoxSi(x=0)の良質な大型単結晶を得ることに成功した。これらの研究成果により、Fe1-xCoxSi結晶への光角運動量移行の影響を今後効率的に定量評価して行く目途が立った。それらと並行して、昇温可能な試料ホルダーを製作し、CsCuCl3結晶へのレーザー光照射条件の検討を行った。具体的には、レーザー光照射によるCsCuCl3結晶の損傷閾値の温度依存性を測定し、コンビナトリアル評価を行うべきパラメータ領域(温度-フルエンス)を限定した。加えて、レーザー光照射位置の試料温度の再現性を高めるために、CsCuCl3結晶の薄板整形加工を実現し、同じ厚さに調整した多数の薄板試料を用意した。また、CsCuCl3の過飽和溶解度の温度依存性の測定、結晶が析出し難い送液配管の材料選定等を行い、結晶成長に対する光角運動量移行の影響を調べるための試料環境の準備を進めた。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、レーザー光の照射条件を少しずつ変えてラゲールガウスビームを照射したコンビナトリアル評価用の試料を用いて、レーザー光の適正照射条件の探索を行うことを予定していた。実際に、Fe1-xCoxSiについては、コンビナトリアル評価用の試料片を放射光X線で顕微観察し、試料結晶に変化が生じるレーザー光照射条件の絞り込みに成功した。ビームタイムの配分が限られているため、CsCuCl3についてはコンビナトリアル評価に至っていないが、試料の準備は出来ているのでビームタイムの配分を待つのみである。研究計画の見直しが必要な問題は発生しておらず、おおむね計画通りに進捗していると自己評価している。
Fe1-xCoxSiについては、レーザーパルス照射痕近傍で結晶カイラリティが変化している様子の放射光イメージングに取り組み、ラゲールガウスビームの角運動量密度分布と対応付けた解析により、光角運動量移行の微視的機構に関して議論を進める予定である。CsCuCl3については、限られた放射光ビームタイムで、ソフトフォノンの不斉励起および不斉結晶成長場に関しての実験的知見が得られるよう、オフラインでの予備実験により照射条件の絞り込みを推し進める予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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