研究課題
初年度は、計画に従い、PrTi2Al20およびPrV2Al20の圧力下での磁場効果の測定、MnPの高圧下中性子回折実験および圧力装置の開発を行った。軌道秩序由来の超伝導出現機構を明らかにするために、PrTi2Al20では,これまで決定した圧力相図を15GPaまで広げる事が出来た。この重い電子状態の超伝導の出現はCe系化合物で報告されたスピンの揺らぎに起因した重い電子超伝導に関係した相図に類似しており、四極子秩序の量子臨界点近傍の軌道揺らぎに起因する超伝導の可能性が示唆される。また、TQの消失した圧力以上でも非フェルミ液体的振る舞いを示す。超伝導転移温度の圧力依存性は、山を二つ持つ構造を示し、新しい起源による超伝導出現の可能性を示唆している。一方、PrV2Al20においても高圧下でTQの消失および超伝導の出現を観測する事が出来、10GPaまでの圧力相図を完成させた。3dカルコゲン化合物においては、MnPの高圧下磁気構造決定を行った。MnPは、常圧下では、295K以下で強磁性に転移し、50K以下では、c面内にモーメントを持つヘリカル構造の反強磁性に転移する。高圧下では強磁性転移温度は減少し、ヘリカル構造は1.5GPa程度で消失する。しかし、2GPa以上では新たな秩序相の出現を示唆する異常が観測された。異常の起源を明らかにするために、高圧下中性子回折実験を行った。測定は、約2GPaおよび約4GPaにおいて4K までの測定を行った。常圧低温でc面内にヘリカル構造を持つ反強磁性構造は、b面内にモーメントを持つヘリカルに変化している事を明らかにした。また、その時の磁気モーメントは圧力と共に減少する事を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
交付申請時の計画に従って研究を行う事が出来た。また、測定結果は、適宜内外の会議で報告すると共に、学術誌に発表した。
特に計画を大幅に変更する必要はない。今後は磁場効果の測定を行う。また、新しい関連物質の研究をあわせて行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
PHYSICAL REVIEW B
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