研究課題
平成27年度は次の二点、(1)極低温磁化測定装置への試料回転機構の組み込み、(2)同装置を用いた強磁性超伝導体UCoGeおよびURhGeの磁気相図、について研究を行った。(1)現有する極低温磁化測定装置(最低温50 mK、最高磁場17T)に二軸回転機構を導入した。これは手動式の一軸回転機構にピエゾ駆動の一軸ゴニオメータを組み合わせたもので、±10度程度の範囲で試料を傾けて磁化測定が行えるものである。希釈冷凍機への回転機構の組み込みは完了し、低温での動作試験にも成功した。この技術開発により、異方性の大きい磁性体に対して正確な磁場方位のもとでの磁化測定が可能になり、またこれまで不可能であった磁場の角度をパラメータとする測定もできるようになった。現在のところ最低温は300mKを達成したが、さらに低温を目指して調整を行っている。(2)強磁性超伝導体UCoGeおよびURhGeはいずれも直方晶のc軸を磁化容易軸とするイジング型の強磁性を示す。これらの超伝導体はb軸方向の高磁場でリエントラント的な上部臨界磁場相図を示すことで注目されている。この特異な超伝導相図は、イジング強磁性の磁化困難軸方向の磁場下における量子相転移と関係があると考えられている。そこで不明な点の多い磁化困難軸方向の磁気相図を調べる研究を開始した。今年度はまずUCoGeのc軸方向の磁化過程の実験を行い、8T付近で弱いメタ磁性的な異方が現れることを見出した。また、URhGeのb軸方向について予備的な磁化測定を行い、12T付近で一次の相転移があることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は極低温磁化測定装置への二軸回転機構の組み込みを主な目標としていた。研究実績の概要に示すように、二軸回転機構は使用可能な状態にあり、角度分解の極低温磁化測定が行えるようになった。ただし、まだ若干の熱流入のため最低温が300mKに留まっている。
1.回転機構への熱流入の原因を突き止め、最低温100mKを達成する。熱流入の原因としては、冷凍機の上部から回転を伝えるシャフト、ピエゾゴニオメータの駆動用リードからの熱流入、および輻射熱が考えられる。これらについて、個々に調べ、原因を突き止める。2.URhGeについては、b軸方向の磁化測定から100mKにおけるメタ磁性磁化曲線を求める。同様の測定を各温度で行い、一次の相転移の臨界温度を決定する。次に、b軸からc軸方向へ少し傾けた状態で同様の測定を行い、一次相転移の臨界終点の有無について探る。3.類似の測定をUCoGeについても行う。
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