研究課題
本研究は、結晶構造の持つ空間反転対称性の破れやトポロジカルな要因で生じる固体の電子バンドの自発スピン分極(spin-momentum locking)に注目し、様々な電子相転移や構造相転移にともなう電子構造の変化を直接観測により解明することを目的とする。本年度は、主に電荷密度波を示す層状遷移金属ダイカルコゲナイドVTe2を対象とし、そのトポロジカルな性質を明らかにした。VTe2は480 K以下でジグザグ鎖型の電荷密度波を形成する擬二次元物質であり、その際に極めて大きな原子変位をともなうことが特徴として挙げられる。また、VをTiに置換することにより電荷密度波形成を抑制し、高温三方晶を基底状態まで安定化することができる。本研究では、 (V,Ti)Te2における電荷密度波状態および一様状態の電子バンド構造とスピン偏極を角度分解光電子分光実験により明らかにした。これにより、VTe2の電荷密度波形成に際し、2次元的なフェルミ面が極めて1次元的な構造へと変化すること、バンドの一部が極端に平坦化した局在的な電子状態を持つこと、ブリユアンゾーンの端(M点)におけるバンド反転が変化しトポロジカルな表面状態の一部が消失することなどを見出した。さらに第一原理計算を行い比較することにより、この系における電荷密度波、結晶構造とトポロジカルな相転移の関連を明らかにした。この他に、磁性元素や銀などの様々なイオンを層間にインターカレートした遷移金属ダイカルコゲナイドを対象とし、磁性金属状態におけるバンド構造とスピン偏極に関する知見を得た。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Sci. Rep.
巻: 8 ページ: 2169/1-8
10.1038/s41598-018-20332-1
Sci. Adv.
巻: 3 ページ: e1700466/1-6
10.1126/sciadv.1700466