研究課題
希土類元素の両端に位置するCeやYb、アクチナイド元素のUなどを含む結晶では、重い電子の形成、エキゾチックな磁気秩序や異方的超伝導など多様な秩序状態、価数揺動に伴う興味ある現象・強相関電子物性が観測されている。特に近年、Ybを含む強相関物質の結晶で非従来型の量子臨界現象とそれに関連した磁性・超伝導について精力的に研究が進められてきた。圧力・磁場・元素置換などをパラメタ―とした物性制御が精力的に行われる中、我々はこれまで大前提として考えられていた周期性に着目し、強相関電子系における並進対称性の役割の研究を進めた。(1)Au-Al-Yb準結晶と近似結晶について、磁化、交流磁化率、比熱を極低温まで測定し、臨界指数・スケーリングから準結晶の量子臨界現象の性質を明らかにした。また、Au-Al-Yb準結晶・近似結晶について静水圧下の磁化率測定を極低温まで行うことにより、Au-Al-Yb準結晶が静水圧に対し「硬い」量子臨界物質であることと対照的に、Au-Al-Yb近似結晶は圧力に「敏感な」重い電子系の近似結晶であること発見した。準結晶の量子臨界現象は準周期性・回転対称性を変えないような静水圧に対して「硬さ」を示すことが明らかとなった。(2)Tsai-typeクラスター構造をもつ強相関電子系の近似結晶の開発を行い、Yb以外の元素置換によりYbの磁性を制御することが可能になった。磁気長距離秩序の有無について調べ、Tsai-typeクラスター構造をもつ近似結晶のYbの価数と磁性の関係を明らかにした。Au-Al-Yb準結晶における量子臨界現象と関係する興味深い結果が得られた。(3)Au-Ge-Yb近似結晶の超伝導の研究を一歩進め、Al-Mg-Zn準結晶において50mKでバルクの超伝導が発言することを明らかにして、準結晶の超伝導の研究の端緒をつかんだ。
2: おおむね順調に進展している
磁性に着目して、電気抵抗・磁化率・比熱の温度依存性を極低温まで測定し、Ybを含むTsai-typeのクラスター構造をもつ新しい強相関電子系の近似結晶を調べた。Ybを含む準結晶・近似結晶では非従来型の磁性が観測され、中間価数のYbの価数ゆらぎが原因であることを示唆する結果が得られた。Au-Al-Yb系準結晶で観測された準結晶の量子臨界現象を理解するための重要な手がかりとなり、準結晶の特殊な原子配置の規則と関係した「局在」でも「遍歴」でもない準周期系特有の電子状態「Critical State」と関係した強相関準結晶の電子状態の解明につながると考えている。また、近似結晶の研究を推し進めてAu-Al-Yb準結晶についてもYb以外の元素置換によりYbの磁性を制御することがわかった。磁気長距離秩序の有無について調べ、f電子が局在・遍歴の中間状態にあるYb の価数を制御して「Critical State」とAu-Al-Yb準結晶における量子臨界現象との関係を調べる研究を進めている。以上のことから研究計画の進捗状況は良好であると判断した。
(1)外部摂動(圧力・置換)に対する準結晶の物理現象のRobustnessの研究強相関電子系の準結晶・近似結晶に対して対照実験を行い、温度・磁場・圧力・元素置換をパタメータとした電子状態の相図から、外部摂動(圧力・置換)に対する準結晶の物理現象のRobustnessにアプローチする。特に近似結晶との対照実験を系統的にまとめることにより、並進対称性・回転対称性と準結晶の物理現象のRobustnessの関係に知見が得られると考えている。(2)準結晶における超伝導の研究Au-Ge-Yb近似結晶の超伝導の研究を一歩進め、Al-Mg-Zn準結晶において50mKでバルクの超伝導が発言することを明らかにして、準結晶の超伝導の研究の端緒をつかんだ。他の超伝導準結晶探索を含め、準結晶における超伝導の研究を進める。(3)Tsai-typeクラスター構造をもつ強相関電子系の準結晶・近似結晶の開発Tsai-typeクラスター構造をもつ準結晶・近似結晶についての物質開発を引き続き行う。3元系の準結晶・近似結晶の物質開発を引き続き行い、強相関電子系の準結晶・近似結晶の探索を行う。極低温・高圧・強磁場下の物性測定を行いTsai-typeクラスター構造をもつ準結晶・近似結晶で強相関電子系を探索する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
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