研究課題/領域番号 |
15H03686
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田仲 由喜夫 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40212039)
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研究分担者 |
柏谷 聡 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術部門, 首席研究員 (40356770)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超伝導対称性 / 新奇なクーパー対 / 接合系 / 超伝導近接効果 / Eilenberger 方程式 / アンドレーエフ束縛状態 |
研究実績の概要 |
(1)超伝導・常伝導体接合と超伝導体の不純物散乱効果 この問題は常伝導体・異方的超伝導体接合で超伝導体側に弱い不純物散乱が存在する際に微分コンダクタンスに与える影響を調べるものである。特にp波超伝導体がバルクにできている場合は奇周波数s波のペアが界面に形成されることが期待できる。この問題をより一般的に解析して、d波だけでなく、p波 時間反転対称性を破るカイラルp波、カイラルd波、カイラルf波に対して調べた。その結果p波超伝導体の零電圧ピークはBorn散乱、Unitary散乱によらず、常に零電圧ピークは抑制されないという事実が確認された。またトポロジカル起源のエッジ状態が現れることも示された。 (2)2チャンネル近藤格子におけるジョセフソン効果の理論 2チャンネル近藤格子においてはバルクの状態として奇周波数クーパー対が存在することが示されていた。この対は重心運動量を持つために、奇周波数ギャップ関数だけでなく偶周波数ペア振幅をバルクの状態でさえ持つという特徴がある。2チャンネル近藤格子系のバルク奇周波数超伝導体におけるトンネル効果の計算を行った。ギャップレス状態の特徴を反映して、フルギャップのコンダクタンスは現れなかった。スピン3重項p波超伝導体とのジョセフソン接合でジョセフソン電流の計算を行った。 (3)スピン3重項超伝導体Sr2RuO4におけるジョセフソン効果の理論 Sr2RuO4は多軌道超伝導体である.この効果をとりいれてs波超伝導体とのジョセフソン電流の計算を行った。コーナージョセフソン接合、コーナーSQUIDに対して磁場依存性を調べた。カイラル状態では、磁場の関数として原点(零磁場)を中心に非対称であるのに対してヘリカル状態では対称であることが明らかになった。またスピン軌道相互作用、バンド間の混成効果がを理解するに際して、奇周波数クーパー対の概念は非常に有用であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超伝導体側に不純物散乱がある場合、2チャンネル近藤格子におけるバルク奇周波数ギャップ関数、多軌道超伝導における奇周波数クーパー対、量子ドットにおける奇周波数クーパー対の研究など理論面の進展は順調である。実験においても光電子分光、表面インピーダンスの実験も始まっており、順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1)拡散伝導領域・超伝導体接合の電気抵抗、Green関数の一般論をより広範な場合に使えるように現在拡張中である。この理論が完成すると2003年に田仲Nazarovで作った接合系の一般論が強力になるだけでなく、px波超伝導体(マヨラナフェルミオン系)における完全量子化コンダクタンスの安定性を徹底的に調べることができるようになる。 2)光電子分光で銅酸化物超伝導体の表面が観測されつつある。理論解析を行うことで、トンネル効果以外の方法でゼロエネルギーアンドレーエフ束縛状態 すなわち奇周波数クーパー対の検出を行う。 3)奇周波数ギャップ関数あるいは奇周波数クーパー対を複合秩序としてとらえる理論が可能であると思われる。その観点で既存の理論を見直すだけでなく新奇な量子効果を予言したい。
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