研究課題
本研究は、有機磁性体が理想的な量子スピン系を形成することに着目し、様々なスピン空間構造の構築と量子特性の解明研究を行うものである。特に、多次元磁気格子やフラストレート磁性体の量子特性に着目する。前年度までの実験により、π共役系の形状や平面性の制御が多方向への磁気相関の発現に有効であることが示された。ここで得られた知見を元に、物質開発を進め、各種物性測定を行い、新しい量子磁気状態の観測および量子化機構の解明研究を行った。主な成果を具体的に以下に記す。(1) これまでに開発した、強磁性鎖を基盤とする二本足梯子格子磁性体は、いずれも弱い梯子鎖間相互作用によって、磁場誘起量子相転移を起こすことを明らかにしている。ここでは、極低温において磁場中の比熱測定および磁気熱量効果を詳細に検討した。ボーズ・アインシュタイン凝縮の量子臨界指数を決定し、量子磁気状態の性質を明らかにした。(2) π共役系有機ラジカルのπ共役分子平面にねじれを導入することで、高次元の磁気格子を戦略的に合成した。二次元反強磁性正方格子物質を開発し、磁気異方性を詳しく調べることで、量子二次元磁気格子に特有の性質を明らかにした。二次元磁気格子としては、二本足梯子格子が二次元的に架橋されたトレリス格子磁性体物質を開発し、隣接スピン間の磁気的競合に起因する、特異な量子磁気状態の観測に成功した。さらに、三次元系として最小の最近接スピン数4を持つ三次元蜂の巣磁気格子物質を開発し、スピンの量子収縮を評価した。以上のように、本研究では、有機ラジカル磁性体の分子設計による多彩な磁気格子の設計と合成に成功し、新しい量子磁気状態の観測に成功した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 10件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
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