研究課題/領域番号 |
15H03698
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
波多野 恭弘 東京大学, 地震研究所, 准教授 (20360414)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 破壊 / 大森則 / 平均場近似 |
研究実績の概要 |
前年度までの実験結果を一般化し、大森則に含まれる時定数(c値)の応力依存性を定量的に解明するために、簡単な数理モデルの構築及び予備的シミュレーションを行なった。 岩石は機械的に複雑な構造を持つため、全体が破壊される前に無数の微小破壊が発生する。そのような微小破壊を記述するために、岩石を多数のミクロ要素の集合体とし、各要素が並列に巨視的応力を支えるというモデルを構築した。このモデルにおいて一つの要素が壊れる際には、壊れた要素が支えていた力を、残っている要素が支えなくてはならない(力の再分配)。この再分配の過程こそが大森則などの破壊統計則に本質的であると信じられている。したがってモデルにおいては再分配ルールの設定が重要になるが、一般的には空間について長距離に及ぶ再分配がなされることが弾性論から帰結されている。この長距離再分配過程を定量的にモデルに組み込む前に、大まかな物理的振る舞いを掴むことが、複雑な系の研究においては重要である。 今年度においては長距離再分配を単純化した平均場モデルを設定し、その振る舞いを調べた。平均場モデルを設定するメリットは、解析解を得ることが可能になることにある。今年度は、ある特別なケースについて実際に解析解を構成し、大森則と逆大森則が解析的に導かれることを示した。同時に、c値の解析的表現も得ることができた。一方で、指数(p値)については実験や実際の地震のものよりはだいぶ大きな値が得られた。この原因については現時点では不明である。また、より一般の場合について解析解を得ることにはまだ成功していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までに得られた実験結果を説明するための数理モデルを構築し、平均場近似を用いて解析解を得ることに成功した。同時に、大森則に含まれるc値の具体的表現を得ることができた。当初の計画では数値シミュレーションでc値の応力依存性を探ることにしていたので、これは予期していなかった成果である。得られたc値の具体的表現から、応力依存性が決まる物理的メカニズムについて具体的な推測が可能となった。このことは来年度の研究を効率的に進める上での指針となる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの実験結果を数理化し、実際の地震をはじめとする一般的な状況への適用可能性を探る。とくに、今年度に求めたc値の具体的表現に基づき、c値を決める物理的メカニズムについて複数の作業仮説を立てる。それらを実験データ及び地震カタログから検証していく。同時に、平均場近似でない場合についてのシミュレーションを行い、c値を決めるメカニズムが近似の詳細にどう依存するか(あるいは依存しないのか)確かめる。その結果について物理的考察を与える。
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