最終年度においては、岩石を構成する要素が並列に応力を支えるモデルの解析とシミュレーションを行った。ここで各要素は完全弾性体だが、応力が閾値を超えると脆性的に破壊され、その要素が支えていた力を周囲に再配分する。ただし系にかかる力は時間一定である。各要素の応力閾値は適当な確率分布関数に従ってランダムに分布しており、この確率分布関数が系を特徴付ける。これ以外のランダムネスや確率過程などは含まれていない。 このシンプルなモデルにおいて、外部から時間一定応力をかけた際の初期挙動が大森則に従うことを発見した。具体的には、臨界応力に近い応力をかけた際の歪変化率が、(t+c)の二乗に反比例して減衰していく。ここでの時定数c値が、要素の破壊応力分布の分散に依存しており、分散が大きいとc値が小さくなることを確認した。ただし、応力に対しては正の依存性を示し、当初の予想と反対の結果となった。この結果は、応力の再分配が平均場の時は解析的に確認し、より一般の再分配モデルについてはシミュレーションによってほぼ同じ結果を得ることができた。 外部からかける応力が臨界応力を超えると、系は時間発展ののち全体が破壊されるが、その際の加速過程も逆大森則に従うことを発見した。指数はここでも-2であり若干大きめの値となる。興味深いことに、ここでのc値は極めて小さく、要素の破壊応力分布の分散などにもほとんど依存しない。 平均場的モデルにおいては、臨界応力の存在がサドルノード分岐に対応し、クリープ的な遅い挙動は分岐点でのスローダウンであることを解析的に示した。
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