本研究では、光周波数を基底状態とした多次元ヒルベルト空間上の量子状態を自在に操作することができるユニバーサル量子操作を目指している。本年度は光周波数変換による量子ビット状態への操作と射影測定を目指した研究を行った。光周波数変換は 2次の非線形光学効果による和・差周波発生により行う。非線形光学媒質として導波路型PPLNを用いて実験を行った。線形光学による量子操作はビームスプリッターを基本として実現される。これと同様の操作を光周波数領域で行うことが重要である。この光周波数スプリッターとも呼べる操作を線形光学におけるビームスプリッターに対応させるには、50%の変換効率の達成が重要となる。これまでに、これを実験的に確認し、異なる周波数の2光子によるHong-Ou-Mandel干渉を世界で初めて観測し、Nature Photonics誌への掲載にした。この50%の変換効率を達成した光周波数スプリッターを用いれば、マッハツェンダー干渉計に代表される1次の光干渉計を実現することが出来る。マッハツェンダー干渉計は1量子ビット操作の実現のために重要となる。この動作確認のために、光周波数領域マッハツェンダー干渉計を構築し、励起光の位相変化により干渉計の位相変化が起きることも実験的に確認した。本年度はこれをまとめて、Optics Express誌に論文が掲載された。これを進めて、稠密な光周波数モードの単一光子での光周波数干渉計の動作を実現するには、高効率な光源が重要であることもわかってきた。本年度はこの効率化に向けて、光共振器を一体形成した導波路型非線形光学結晶の動作確認を行った。非線形光学結晶としてPPLN導波路を用い、共振器モードにあったパラメトリック変換光が生成されることを確認した。
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