研究課題/領域番号 |
15H03715
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山野 誠 東京大学, 地震研究所, 准教授 (60191368)
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研究分担者 |
後藤 忠徳 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90303685)
笠谷 貴史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 主任技術研究員 (90373456)
川田 佳史 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (50402558)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本海溝 / アウターライズ / 断層 / 海洋地殻 / 熱流量 / 電磁気探査 / 流体循環 / 浸透率 |
研究実績の概要 |
1.海底熱流量測定用に、従来よりも細くてセンサ数の多い温度プローブと、それに対応する計測回路(海底での熱伝導率計測機能を有する)を製作し、平成27年11月の「新青丸」KS-15-16航海等で動作試験を行い、その結果に基づいて改良を進めた。人工電流源を用いた電磁気探査の分解能を向上させるため、高周波数の信号データ取得に対応した海底電位計を製作した。 2.KS-15-16航海において、北緯39度付近の日本海溝アウターライズ上で高密度の熱流量測定を実施した。海溝軸や断層の走向に平行な方向(南北)にも、直交する方向(東西)と同様に、熱流量が数kmスケールで大きく変化することが明らかになった。また、より海溝軸に近く、顕著な崖地形を示す発達した断層の近傍においても、熱流量の急激な変化が観測された。 3.26年度に北緯39.5度付近の日本海溝海側で行われた、予備的な人工電流源探査により得られたデータを解析した。送受信距離約2kmまで明瞭なシグナルが得られており、さらに処理を施すことで距離4km程度までのデータが解析に使用できる。その結果、海底下2km程度までの構造を求めることが可能と見込まれる。また、探査地点近傍の海洋地殻上部が低比抵抗であり、流体の存在を示唆することが判明した。 4.日本海溝アウターライズ上における短波長の熱流量の変動は、プレートの曲がりによる海洋地殻の破砕が不均質に進行するためと考え、その過程のモデル化を試みた。破砕による地殻内の透水率の増加が、部分的かつ急激に生じたと仮定して、流体循環と熱輸送の数値計算を行ったところ、観測されたような数km幅の熱流量異常が生じることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本海溝海域での熱流量測定は、調査航海中の悪天候の影響で、当初の予定に比べて限られた回数の実施となったが、特に重要な地点での測定は行うことができた。その結果は、従来のデータに対して新たな知見を加えるものであった。 熱流量測定機器の海中動作試験を2回の調査航海で行い、機器の改良を進める予定であったが、荒天により1回の航海のみでの実施となった。このため、進行がやや遅れたが、補助金の一部繰越を含めた計画変更を行い、28年度の調査航海で試験を実施することにより、遅れの影響を小さくすることができた。 海底電磁気探査を行う調査航海の提案が不採択に終わり、探査の開始は予定より遅れることになったが、使用する人工電流源と海底電位計の機能向上によって、より高分解能で、より深くまでの探査を行うことが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の重要な構成要素である、人工電流源による海底電磁気探査を実施できるよう、調査航海提案の採択に向けた努力を続ける。 日本海溝・南海トラフ海域の熱流量データの解析と数値モデル計算を進めた結果、海洋地殻上部透水層の浸透率について、地域による不均質に加えて異方性を考えることの重要性が明らかになってきた。このため、浸透率の異方性を取り入れた流体循環のモデルを構築し、数値計算を行うことを、28年度以降の研究計画に加える。 日本海溝などのアウターライズにおいて、破砕されたプレート上部に水が入り込む過程と、それが沈み込み帯に及ぼす影響が、地球科学の幅広い分野において注目されてきている。本研究課題による熱・電磁気の合同探査を発展させ、物質科学を含む多様なアプローチによるアウターライズの総合的な研究を行うことが重要となる。これを目指して、アウターライズ研究に関する学会セッションや研究集会を開催し、情報交換・議論を進めていく。
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