研究課題/領域番号 |
15H03720
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
末次 大輔 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球深部ダイナミクス研究分野, 分野長 (20359178)
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研究分担者 |
塩原 肇 東京大学, 地震研究所, 教授 (60211950)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 巨大海台 / 海底地震観測 / 海底電位差磁場観測 / マントル上昇流 |
研究実績の概要 |
オントンジャワ海台北縁に位置するミクロネシア連邦とマーシャル諸島に設置している地震観測点の保守点検作業とデータの回収をおこなった。いずれの観測点でもデータは正常に収録されており、地震観測は順調である。 また、平成28年度の海底地震計・海底電位差磁力計回収を前に、データが公開されている既存の陸上地震観測データを用いてオントンジャワ海台とその周辺の上部マントル構造を推定した。PP波とP波の到着時刻の差がPP波の地表反射点直下の上部マントル地震波速度を反映することに着目した。オントンジャワ海台とその周辺にPP波が地表反射点を持つ地震と観測点の組み合わせを2012年-2013年に起きた地震について選び出し、地震波形データを収集した。波形データのP波に対してヒルベルト変換、減衰、地殻構造の補正をおこない、PP波との相互相関をとることによってPP波とP波の到着時間差を測定した。測定値と標準地球モデルによるPP波とP波の到着時間差からのずれを計算した。ずれの値を地表反射点にプロットしたところ、オントンジャワ海台直下ではずれの値は正となった。これはオントンジャワ海台直下の上部マントルにおけるP波速度が標準的地球モデルよりも速いことを意味している。過去の研究で見出されているオントンジャワ海台直下上部マントルにおける低S波速度異常と逆であり、興味深い。 平成28年2月には海洋研究開発機構(JAMSTEC)東京事務所において、日本の研究機関でオントンジャワ海台研究をおこなっている約20名の地球物理学、地球化学、地質学研究者によりワークショップをおこない、最新の研究成果の発表と情報交換をおこなった。 平成28年度に海底地震計・海底電位差磁力計回収に利用する予定だったJAMSTEC海洋地球研究船「みらい」は、JAMSTECの船舶運用上の事情からJAMSTEC学術研究船「白鳳丸」に変更して実施することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オントンジャワ海台北縁に位置するミクロネシア連邦とマーシャル諸島に設置している地震観測点でデータは正常に収録されており、地震観測は順調である。地動ノイズも低く、品質の高いデータが蓄積されつつある。 既存の公開データの解析によるオントンジャワ海台直下上部マントル構造研究では、PP波とP波の時間差からオントンジャワ海台直下にP波の高速度異常を見出した。 また、平成28年度の海底地震計・海底電位差磁力計回収航海がJAMSTEC学術研究船「白鳳丸」によって実施されることが決定した。回収地点が排他的経済水域(EEZ)にあたるマーシャル諸島、キリバス共和国、ナウル共和国、ソロモン諸島、パプアニューギニア、ミクロネシア連邦 に対する研究航海許可申請書を作成した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年1-2月に「白鳳丸」による航海を実施し、オントンジャワ海台とその周辺に設置している全海底機器(広帯域海底地震計23台、海底電位差磁力計20台)を回収する。回収時は船上から錘切り離し信号を送り、自己浮上させる。回収した機器は研究船に載せたまま日本まで輸送する。回収した機器からデータをパソコンに吸い上げ、フォーマット変換やイベントデータ切り出し、機器の方位決定など、その後のデータ解析に必要な前処理、準備作業を行う。ミクロネシア連邦とマーシャル諸島での広帯域地震観測を年度末まで継続する。現地に出向いてデータを取得するとともに機器のメンテナンスを行う。 平成29年度には回収された地震波データに対して、表面波トモグラフィー解析、実体波トモグラフィー解析、レシーバー関数解析をおこない、オントンジャワ海台直下の地殻、上部マントル構造を推定する。電位差、磁場データに対しては3次元マグネトテルリック法を適用し、3次元電気伝導度構造を推定する。地震波走度構造と電気伝導度構造を統合的に解釈し、オントンジャワ海台直下の温度や化学組成を推定する。
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