研究課題
フィールド観測としては、8月に米国アラスカ州のバローに出向き、2013年および2014年に設置した海氷・海洋の両方を対象とした係留系2系の回収を行い、それぞれ2年間と1年間に渡る良好なデータを取得することに成功した。この際には同じ構成の係留系を2系再設置した。また、9月の「みらい」による航海でバロー沖での海洋観測を実施した。これまでに取得した係留観測データについては、海氷厚データの処理・解析を進め(2009-10年と2011-12年の2年間分)、陸岸に近い定着氷域(陸岸や海底に接していて動かない海氷域)の海氷厚の特徴が明らかになりつつある。また、流速データの解析によって、冬季に海面の大部分が海氷に覆われると顕著に流速が低下することを明らかにした。バロー沖の係留観測データを用いて、この海域に出現する沿岸ポリニヤ(薄氷域)における過冷却水とフラジルアイス(海氷の出来始めに見られる氷晶)の形成過程 (Ito et al., 2015) 、陸上や航空機からの海氷観測データとの比較 (Mahoney et al., 2015) 、この海域に出現する沿岸ポリニヤの特徴の特異性 (Hirano et al., 2016) についての成果を論文にまとめた。また、この係留観測データと船舶観測データを組み合わせることで、2010年夏季における流量と熱輸送量の見積りを行い、その成果を論文にまとめた (Itoh et al., 2015) 。
2: おおむね順調に進展している
フィールド観測については、バロー沖の係留系の回収(海洋研究開発機構が「みらい」で行ったものも含む)・再設置および「みらい」による航海での海洋観測を予定通りに実施することができた。データ解析については、バロー沖およびバロー海底谷(海洋開発研究機構が実施)に設置された係留系の両方について順調に進展しており、上記に挙げた雑誌論文の成果に加えて、海底堆積物の上方輸送と海氷への取り込み過程、沿岸ポリニヤの特徴の経年変動、バロー海底谷における流量、熱・淡水輸送量の経年変動などについて学会発表を実施した。
係留観測については、当初の予定通りに今年度はバロー沖の係留系の回収・再設置は行わず、現在設置中の係留系での観測を2年間に渡って継続するが、来年度に予定している回収・再設置に備えて、機材の返送と整備、購入とテストを実施する。船舶観測については、昨年度と同様に「みらい」による船舶観測を今年度も実施する。データ解析については、まだ処理が終わっていない2013-15年の係留観測データからの海氷厚の導出を行うとともに、上記に挙げた学会発表のテーマについて、その成果を論文にまとめる作業を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 10件) 備考 (1件)
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10.1002/2015JC011318
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http://wwwoa.ees.hokudai.ac.jp/~yasuf/ext_fund.html