研究課題
大気中のメタンは、二酸化炭素に次いで重要な温室効果気体としその動態が注目されているが、生成・消滅過程が非常に複雑であるために、濃度変動の原因が十分に理解されていない。本研究では、メタンの放出源に関する情報を持つメタンの炭素・水素同位体比の全球観測を行い、大気中メタン濃度の変動原因について知見を得ることを目的とする。本年度の実績は以下の通りである。・国立極地研究所に設置されている連続フロー式ガスクロマトグラフ・燃焼炉・質量分析計(GC-C-IRMS:MAT-252、MAT-253)の精度を維持しつつ大量の大気試料分析を実施するため、定期的に装置の不具合対応を行った。・東北大学に設置されている連続フロー式ガスクロマトグラフ・熱分解炉・質量分析計(MAT-deltaPLUS)について分析シーケンスの調整を継続して実施した。・北極域4地点(スバールバル諸島ニーオルスン、カナダ・チャーチル、ロシア・スルグート、北太平洋)での大気採取法によるメタン濃度とメタン炭素水素同位体比の時系列観測を維持すると共に、西太平洋を航行する民間コンテナ船上及び南極昭和基地で採取した大気試料の分析を行い、それぞれ高精度観測データを得た。また、同位体比分析値の連続性を維持・確認するために、定期的に同位体比スケールの確認実験行った。・ニーオルスンにおけるメタン濃度、メタンの炭素・水素同位体比観測データの解析を行い、2000年代前半の大気中メタン濃度の増加停滞の原因は、化石燃料起源及び微生物起源メタンの放出が共に減少していた可能性を指摘した。また、2007年以降のメタン濃度の再増加には微生物起源メタンの放出が寄与していたことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
適宜質量分析計の不具合対応を行い、分析が停止している期間をできるだけ短くすることで大量の大気試料分析を継続実施できたこと。さらに、本研究で得られたデータの解析から、非常にクオリティの高い観測データを得つつあることが確認できたことによる。
北極域・西太平洋域・南極域で定期的に採取される大量の大気試料の高精度分析を継続し、世界的にみても不足しているメタン濃度と同位体比の時系列データを着実に蓄積すると共に、大気モデルを援用したデータ解析を行い、大気中メタン濃度の変動原因についての研究を推進する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Tellus
巻: 69B ページ: -
10.1080/16000889.2017.1311767
巻: 68B ページ: -
10.3402/tellusb.v68.29972
http://caos.sakura.ne.jp/tgr/observation/network-2