研究課題/領域番号 |
15H03726
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
辻野 博之 気象庁気象研究所, 海洋・地球化学研究部, 主任研究官 (50343893)
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研究分担者 |
小室 芳樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 北極環境変動総合研究センター, ユニットリーダー (90396945)
鈴木 立郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 技術研究員 (10415995)
富田 裕之 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (10435844)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 海面フラックス / 海洋気候変動シミュレーション / 海洋-海氷モデル相互比較 / 大気再解析の検証 / 全球海洋熱・淡水収支 |
研究実績の概要 |
① 海洋モデル駆動用データセットの再作成と検証:昨年度行われた国際的な協力体制におけるデータセットの検証結果を受け、海洋モデル駆動用データセットのうち、大気状態の再作成を行った。再作成においては、元とする長期大気再解析(JRA-55)に取り込まれる観測データの質と量に関する経年変化を考慮し、それぞれ特徴を示す期間毎に別々の系統誤差修正量を求める手法を採用した。再作成されたデータセットでは、再解析に取り込まれる観測データの変遷の影響が低減され、海洋-海氷モデルを駆動した実験では、海洋モデル相互比較実験に使用されるデータセット(CORE)と同様の海洋気候経年変動特性が再現されるようになった。
② 河川データの作成:長期大気再解析(JRA-55)の陸面データに基づいて、河川流下モデルを駆動することにより、東西・南北0.25度格子、日別の海洋への河川流入データを作成した。河川流下モデルの入力データとなる、陸面から河川への流出量については、現在広く用いられている海洋-海氷モデル駆動用河川データ(1度格子、月毎)と長期間平均が一致するように調整を行った。グリーンランドおよび南極大陸からの氷床の流出に関しては、CLIVAR 海洋モデル開発パネル出席時に受けた助言により、公表されている論文等に基づき、別途取得・作成し河川データの一部として取り込んだ。
③ ①、②で作成した大気および河川データを用いて、再度海洋-海氷モデル駆動実験を行った。グリーンランドおよび南極大陸からの氷床流出の精緻化は、海洋-海氷モデルにおける深・底層水形成に当初の想定以上の影響を及ぼすことが分かったが、長期積分の過程で、従前の結果と同様の結果に近づくことが分かった。研究分担者や外国研究機関による実験結果も同様であった。こうした淡水外力のモデルへの影響についても今後精査が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際的な協力・検証体制のもと実施しているため、作成したデータセットに対しては多角的なフィードバックがかかり、データの再作成を複数回実施することとなったが、それが却って良質かつ国際研究コミュニティに受け入れられやすいデータセットの作成に至っている。海洋-海氷モデル駆動結果も海洋モデル相互比較実験に使用されるデータセット(CORE)により駆動された場合と遜色のないものであり、今後の活用が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
データセットの作成方法の詳細と、既存のデータセットや現場観測データとの比較による検証結果ををとりまとめ、論文あるいは技術報告書を作成し、引用可能な文書として出版する。 本データセットと既存のデータセットを用い、海洋モデル国際相互比較実験の実施要領に準拠した全球海洋-海氷モデル駆動実験を行い、モデルに生じる海洋気候変動に対する理解を深める。研究分担者、協力者による同様の実験結果と詳細な比較を行い、データセットの海洋-海氷モデル駆動データセットとしてのパフォーマンスを記述した論文あるいは技術報告を作成する。 本データセットにより北太平洋領域高解像度モデルを駆動する実験を行い、北西太平洋域で直近に生じている海洋気候変動の理解を深める。
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