研究課題
1.気象庁海洋気象観測船凌風丸2016年1月航海で、東経137度線の北緯7度、6度、4度にアルゴフロートを投入し、係留中のTRITONブイと組み合わせて、北緯4度から8度にかけての疑似アレイを構築した。さらに、フロートがシンクロ観測が行えるような制御ソフトを開発し、2日毎の同時観測を開始した。現在フロートとデータの監視を行っており、データが蓄積され次第研究に耐える遅延品質管理を実施する予定である。2.衛星海面高度計データを利用して、海洋変動の時空間相関スケールについて解析を行った。その結果、特に、熱帯太平洋西部の疑似アレイを構築した海域では、ロスビー波に伴い持続しながら東へ伝播するシグナルが卓越していて、このシグナルの伝播を考慮すると、東西方向にかなり長い相関スケールとなることがわかった。3.本研究の目的の一つである観測システム評価研究に関する国際協力の一環で、本研究の前身となる科研費研究若手B「準結合同化システムのブリーディング法による海洋観測システム評価研究」で行っていた熱帯太平洋海洋観測システムのインパクト評価に関するレビュー論文の作成を引き続き行い、2015年に英国気象学会誌に掲載された。4.全球海洋同化実験海洋外観プロジェクト(GODAE Ocean View)観測システム評価タスクチーム、気候の変動と予測可能性に関する研究(CIVAR)全球観測統合パネル、および、2020年以降の熱帯太平洋観測システム検討グループ(TPOS2020)モデル・データ同化タスクチームに参加し,今後の熱帯太平洋観測システムの評価、設計に関する議論を行った。また、米国環境予測センター(NCEP)等と熱帯域水温場の海洋データ同化システムによる解析結果の相互比較を行い、観測数の低下した時期に、システム間の相違が大きくなっていたことを確認した。
3: やや遅れている
本研究では、特異ベクトル法により抽出した成長擾乱を用いて、熱帯太平洋域における有効な海域の評価を行う予定であった。そのために必要な全球海洋大循環モデルアジョイントコードについては気象研究所の経常研究で開発していたが、その開発が遅れたため、2015年度は特異ベクトル法を利用した研究について進展しなかった。アジョイントコードは、2015年度末に完成しているので、2016年度から特異ベクトルを計算するプログラムの開発など、本研究の目的達成のために必要な開発を行っていく。なお、疑似アレイの構築や観測システム評価研究に関する国際協力に関しては、概ね予定通りに進捗した。
本研究ではアルゴフロートを投入して疑似アレイの構築を行ったが、アルゴフロートの動きが速いため、当初想定したようなフロートとTRITONブイとの位置関係を十分に長い期間維持することが困難であると考えられる。そのため、今後は南北に配置された観測システムの有効性を確認することにはこだわらず、2日間隔で観測を取得していることを生かして、観測間隔のデータ同化に与えるインパクト等を調査することにより、フロートを有効に活用していく予定である。また、データ同化や観測システム評価に関する国際ワークショップなどに出席し、議論に積極的に参加することにより、本研究の目的である熱帯太平洋海洋観測システム評価のための国際協力を今後さらに推進していく。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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