研究課題
1.気象庁海洋気象観測船凌風丸2016年1月航海で、東経137度の北緯7度、6度、4度にアルゴフロートを投入し、係留中のTRITONブイと合わせて北緯4度から8度にかけての疑似アレイを構築し、2日毎の観測を実施した。しかしフロートの移動が想定より早く、南北のラインでデータが取得できたのは2ヶ月程度であった。また、三基のフロートのうち一基は4月末にインドネシア多島海に向かったため、停泊深度を300mに変更したところ太平洋に残る方向に移動の向きを変えたが、その直後に通信不能となった。残りの二基については、現在も熱帯太平洋西部で二日毎の観測を実施している。2.全球海洋アジョイントモデルを利用した特異ベクトルの計算手法の開発を開始した。四次元変分法海洋データ同化システムにおいて、特定の種類の観測データや無作為に抽出されたアルゴフロートデータを同化する観測データから除外するルーチンを整備した。また、準ニュートン法による最適化の過程で得られる情報から解析誤差共分散行列を推定する手法についても開発した。今後は、これらの手法を用いて観測システムのインパクトを検証する。3.気候の変動と予測可能性に関する研究(CLIVAR)全球統合パネルの会合で観測システム評価研究の現状のレビューについて発表した。2020年以降の熱帯太平洋観測システム検討グループ(TPOS2020)モデル・データ同化タスクチームでは、熱帯太平洋観測システムを維持するために定常的な観測システムを評価する仕組みを構築すること、および、その有力な手法の一つとしてリアルタイム海洋再解析相互比較の支援を行うことを提案した。また、米国環境予測センター(NCEP)など各国期間と熱帯域水温場の海洋データ同化システムにより解析された熱帯域水温場の相互比較を行い、観測数の低下した時期にシステム間の相違が大きくなることを示し、論文で発表した。
3: やや遅れている
本研究では、特異ベクトル法により抽出した成長擾乱を用いて、熱帯太平洋域における有効な海域の評価を行う予定であった。そのために必要な全球アジョイントコードについては気象研究所の経常研究で開発していたが、その開発が遅れたため、特異ベクトルを計算するためのプログラムの開発の開始が2016年度となり、当初の予定より遅れている。また、投入したアルゴフロートから疑似アレイとしてのデータを取得できた期間が当初の想定より短く、検証の対象を疑似アレイ観測の効率から、高頻度観測(2日毎)のインパクトに変更するなどの必要が生じたため、まだ、十分な検証を終えていない。なお、観測システム評価研究に関する国際協力に関しては、熱帯太平洋の観測データのインパクトについて、米国やヨーロッパの研究者と共同で作成した論文が受理されるなど、当初の想定以上の成果を上げている。
当初予定していたアルゴフロートによる疑似アレイの観測インパクトの検証については、フロートの移動が想定より早く十分なデータがそろわなかったので、そのかわりに投入したアルゴフロートで取得した2日毎の観測を有効活用し、観測頻度のデータ同化システムの精度に与える影響について検証する予定である。また、特異ベクトル法と合わせて、準ニュートン法により観測誤差共分散行列を求める手法を用いることにより、観測データのインパクトについてより客観的な検証をおこなうことを検討する。また、2017年度より海洋データ同化実験海洋外観プロジェクト(GODAE Ocean View)観測システム評価タスクチームの共同議長に就任しているので、同タスクチームの会合や関連する国際ワークショップに参加し、最近10年程度の観測システム評価研究の成果についてレビューを行うと共に、共同議長として、本研究の目的である熱帯太平洋観測システム評価のための国際協力を、さらに推進していく予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Journal of Oceanography
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10.1007/s10872-017-0414-4
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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