研究課題
1.気象庁海洋気象観測船凌風丸2016年1月航海で太平洋熱帯域西部に投入したアルゴフロート2基により、2日毎の観測をそれぞれ2017年9月と12月まで継続して実施した。なお、三基のうち一基は2017年4月にインドネシア多島海に向かったため、海洋データ同化システムによる解析結果から深層に太平洋に戻る方向の流れがあることを確認し、できるだけ深層での滞在時間を長くするため観測間隔を10日に変更したところ、太平洋方向に移動させることに成功し、その後の太平洋熱帯域西部での観測の継続を可能とした。2.全球海洋4次元変分法データ同化システムの改良を行った。2010年以降についてその性能評価のため、特定のアルゴフロートを同化データから除外した海洋データ同化実験を実施し、除外したデータを用いて精度検証を行い、熱帯不安定波がよく再現されるなどの高精度化が確認された。また、準ニュートン法による最適化の過程で得られる情報から解析誤差共分散行列を推定する手法を本システムで適用するためのコードの修正も行った。今後は、これらの手法を用いて観測システムのインパクトを検証する。3.本科研費の主要な目的の一つである観測システム評価に関する国際協力に関連して、2017年より全球海洋データ同化実験海洋概観プロジェクト(GOV)観測システム評価タスクチームの共同議長に就任した。共同議長として、タスクチームに対して気候変動と予測可能性に関する研究(CLIVAR)全球統合観測パネルや2020年以降の熱帯併用観測システムに関する研究(TPOS2020)の活動を報告すると共に、観測システム評価研究に関する国際的な研究成果のとりまとめを行った。また、共同議長として、2019年に開かれる海洋観測会議(OceanObs19)に向け海洋観測システム評価似関するCommunity White Paperの作成を申請した。
3: やや遅れている
気象研究所で実施予定であったアジョイント法を用いた特異ベクトル解析による観測システム評価についてまだ実施できていない。手法をアジョイント法を用いた解析誤差分散の評価に変えて、今年度実施する予定である。その他、国際研究協力については順調に実施し、多くの成果が出ている。
これまでに開発・改良を行ってきた全球海洋4次元変分法データ同化システムにおいてArgoフロートや係留ブイなどある特定の観測データを除いた同化実験を行うことにより、それらのデータのインパクトについて検証する。また、アジョイント法を用いた解析誤差共分散の評価手法を上記システムに適用し、その結果を用いた観測データのインパクト評価も合わせて行う。観測システム評価似関する国際研究協力については、GOV観測システム評価タスクチーム共同議長として、研究成果のとりまとめおよび観測計画の立案等への活用をさらに推進する。そのため、OceanObs19'に向けて、関連する国内外の研究者と協力して、観海洋測システム評価に関するCommunity White Paperを作成する。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 10件、 招待講演 6件)
Journal of Oceanography
巻: 73 ページ: 403-426
10.1007/s10872-017-0414-4