研究課題/領域番号 |
15H03728
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
楠 研一 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 室長 (40354485)
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研究分担者 |
吉田 智 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 主任研究官 (00571564)
足立 透 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 主任研究官 (10632391)
猪上 華子 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 研究官 (20442741)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 積乱雲 / 電荷分布 / 雷放電 / フェーズドアレイレーダー |
研究実績の概要 |
平成29年度は、これまでの観測で取得された北関東周辺(夏季)および庄内周辺(冬季)の雷放電3次元データの解析を行い、積乱雲の構造と雷放電活動の関係性に関する調査を実施した。雷放電点の高度とともに、気温の鉛直プロファイルを用いて放電点の温度を算出し、冬季と夏季に分けて統計を取った。その結果、夏季雷と冬季雷では電荷分離が活発になる高度は大きく異なるものの、温度で見れば、-10℃付近で最も活発化することが明らかになった。この成果は、-10℃付近で電荷分離が活発になる着氷電荷分離機構が、夏季雷だけでなく冬季雷でも同様に働くことを示唆する。 さらに、放電点の水平方向の広がりを表す指標として放電長を定義し、その統計的な性質を調査したところ、夏季雷に比べて冬季雷は2倍を超える値を有することが明らかになった。冬季には、比較的に弱い上昇流を持つ複数の積乱雲がバンド状に連なる構造を有し、その結果として電荷分布が水平に広がることを示唆する。さらにこのことは、冬季雷における移動電荷量が夏季に比べて大きいという、よく知られた観測的事実と整合的な結果と考えられる。 これらの成果は、積乱雲の降水構造と電荷分布が密接な関わりを有することを示す。そこでその時間変化を捉えるため、フェーズドアレイレーダーを用いた積乱雲構造の高速立体解析に取り組んだ。平成29年夏季に得られた観測データを用いて、積乱雲内の降水領域の振る舞いを30秒毎の高頻度で立体的に導出したところ、その盛衰が極めて細やかに捉えられることが明らかになった。さらにこの過程で、積乱雲の動的理解のためには気流構造を精度よく導出することの必要性が示された。最終年度にあたる次年度は、この観点から解析研究に取り組み、当該課題全体の達成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に得られた成果は、年度当初の実施計画にある積乱雲内電荷構造とその時間変化に関する要素目標を満たすものである。さらに、現象の本質的理解のためには気流構造の精密解析の必要性が新たに明らかになり、次年度につながる成果が得られた。最終年度である平成30年度は、この観点から解析を進めて積乱雲の気流構造の時間変化を明らかにするとともに、平成29年度までの知見を組み合わせることにより、当該課題全体の達成が見込まれる。このため、概ね順調な進捗状況であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの観測・解析研究により、降水粒子、気流場、および電荷分布の間に極めて密接な関係があることが明らかになった。次年度は、さらにフェーズドアレイレーダーによる高速スキャン観測データを用いて積乱雲構造の時間変化に関する解析を進め、時間発展モデルの構築につなげる。また最終年度として、当該課題で得られた知見を総括的に取りまとめ、研究成果を公表する。
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