研究課題/領域番号 |
15H03729
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
太田 芳文 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 研究官 (70442697)
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研究分担者 |
石田 春磨 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (90374909)
岩渕 弘信 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80358754)
櫻井 篤 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20529614)
関口 美保 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (00377079)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 気象学 / 大気放射 / 放射エネルギー収支 / モデル化 |
研究実績の概要 |
本研究課題では高効率のマルチスケール大気放射モデルを開発し、放射エネルギー収支の観点から雲の三次元放射効果を定量化することを目指している。平成28年度はモデル中核部分の精度検証と、モデル予備技術の開発、衛星観測データの予備解析に重点を置いた。具体的には、以下の通りである。 モンテカルロ法を用いた三次元大気放射伝達モデルにおいて多波長同時計算を効率的に行うため,最大消散係数法による新しい計算法を提案した。また、明示的三次元放射伝達モデルの波長積分法に並列計算機能を実装し、効率的な波長積分が行える三次元放射モデルを構築した。これにより、三次元放射場の計算がより効率的に行えるようになった。明示的三次元放射モデルとモンテカルロ放射モデルの計算結果の比較を進めたところ、短波長帯において前方散乱が卓越する場合には明示的放射モデルの計算結果に無視できないバイアス誤差が生じる可能性があることが示唆された。一方で、明示的一次元放射モデルに導入したアジョイント放射伝達スキームを高度化し、雲の光学的厚さや水蒸気量などに対する線形放射モデルを構築した。これに加えて、気象衛星ひまわり8号用のガス吸収モデルと地表面の双方向反射モデルを整備し、衛星観測データを使った雲場の解析に必要なモデル基盤技術を整えた。 CloudsatおよびCALIPSOによる1年分の衛星観測データを使用し、雲の空間不均質性の実態を水平解像度18km で全球にわたって調査した。雲の鉛直構造を高度および単層・多層に分けて10種類に分類し、各分類の雲の出現頻度を解析した。また,衛星観測からの雲物理量の推定における雲の不均質性の影響をSCALE-LES データを用いて解析した。SCALE-LESデータに対しては三次元放射モデルを適用できる計算環境を整え、太陽天頂角に対する放射フラックス・加熱率の分布を調べるための予備実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題ではマルチスケール大気放射モデルの開発・高度化を行い、雲の三次元放射効果を定量化することを主目的としている。今年度は、モデル中核部分である三次元放射伝達スキームの精度検証、予備技術であるアジョイント放射伝達モデル・地表面双方向反射モデル・高効率な波長積分スキームの開発、および衛星観測データの予備解析を行った。これにより三次元放射効果の見積もりを行うために必要な放射モデルと各種のデータが揃い、次のステップであるオフライン実験を行える環境が着実に整った。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表機関のメンバーを中心に、これまでに開発した放射モデルを雲解像気象シミュレーションデータや衛星観測データに応用し、オフライン実験による雲の三次元放射効果の解析を行う。計算結果と解析結果を踏まえ、必要に応じて研究分担者と協力してモデル要素技術の改良・高度化を行う予定である。また、衛星観測による雲プロダクトを用いた雲の不均質性の評価を継続して行う予定である。解析結果とモデルの高度化について国内外の学会・学術論文等で研究発表を行うとともに、最新の学術情報の収集に努める。
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