研究課題
本研究は、火星のCO2の流出機構の中でも特に不確定性が大きい「電離圏CO2+の流出機構」を解明することを目的とする。特に、太陽風からの運動量輸送などの上側からの領域間結合と、大気重力波に起因する乱流拡散や大規模風速場の変化などの下側からの領域間結合の影響が、電離圏CO2+の流出に果たす役割を明らかにすることを目指している。計画3年目である平成29年度には、下層大気起源の重力波が超高層大気に及ぼす影響を明らかにするために、MAVEN衛星のNGIMSやIUVSの観測データを解析し、火星中間圏及び熱圏における大気重力波振幅の高度分布・緯度分布・経度分布・季節変動の観測結果を纏めるとともに、火星熱圏・外圏DSMCコードを用いて大気重力波がCO2密度の高度分布に及ぼす影響を定量評価した。鉛直波長が長い(200km以上の)大気重力波の伝搬・散逸が熱圏密度分布に及ぼす影響は大きく、高度150km以上における密度増加は、二酸化炭素(CO2)で20-30%、窒素(N2)で10-15%、酸素原子(O)で5-8%程度になることを明らかにした。本結果は、下層大気から伝搬する大気重力波が、上部熱圏におけるCO2の存在度および流出率を増加しうることを示すものである。太陽風から電離圏への運動量輸送については、MAVEN衛星のプラズマ総合観測に基づき、太陽風相互作用によって生じるプラズマ境界層位置の統計的特性を纏めて学術論文として公表した。太陽風-火星電離圏相互作用の多成分磁気流体力学コードへの粘性効果の組み込みにおいては、Bohm型異常粘性項とプラズマ分子粘性項を用いて現象論的にコードに組み込み、各粘性項の大きさを変化させた計算を多数回実行してパラメータ依存性を纏め、太陽風からの運動量輸送が電離圏イオンの流速と流出率に及ぼす影響を定量的に評価した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 14件、 招待講演 3件)
Icarus
巻: 302 ページ: 175~190
10.1016/j.icarus.2017.10.047
Geophysical Research Letters
巻: 45 ページ: 595~601
10.1002/2017GL076586
Journal of Geophysical Research Space Physics
巻: 122 ページ: 9723~9737
10.1002/2017JA024217
巻: 44 ページ: 7653~7662
10.1002/2017GL073754