研究課題
放射線帯変動の原因として外部供給説と内部加速説があり、その定量的評価が求められている。両説において重要な役割を果たすと考えられるサブストームを中心とした磁気圏の変動過程に着目するとともに、グローバル電磁流体シミュレーションと粒子移流シミュレーションを組み合わせて内部磁気圏電子の応答過程を再現した。(1)内部加速説においては、低エネルギーの電子が主に磁気圏対流及びサブストームによる輸送モードによって内部磁気圏に輸送され、ホイッスラーモードコーラス波を成長させると考えられている。電磁流体シミュレーションにより、太陽風から内部磁気圏に至るエネルギーの流れと変換過程を明らかにした。(2)サブストームの発達過程を象徴するのはオーロラ・ブレイクアップ現象である。明るいオーロラ(サージ)が西側に移動する理由を明らかにすることができた。このとき、内部磁気圏では電磁エネルギー・熱エネルギー・運動エネルギーの変換が積極的になされており、サブストームによって注入された粒子の重要性が明らかになった。(3)オーロラの発光強度シミュレーションを行い古文献にある過去のオーロラ記録の再現を試みた。内部磁気圏の電子がL=1.39まで近づいたこと、通常の電子群とは異なる温度が極めて低い成分が選択的に存在していた可能性を示唆する結果が得られた。対流による内部磁気圏電子の輸送モードの限界を示す結果であり、極端な放射線帯環境を考える上で重要な知見である。(4)EMIC波動は放射線帯電子を効率よく散乱することが知られている。EMIC波動を励起しうるイオンは、惑星間空間衝撃波到来すると特徴的なエネルギー分散構造が現れることを示した。(5)惑星間空間衝撃波到来時における内部磁気圏電子の移流を解き、全エネルギー帯域で電子フラックスが上昇するが、その影響は特に高エネルギー(MeV)帯に現れることを明らかにした。
3: やや遅れている
放射線帯変動原因を理解する上で重要となるサブストームと惑星間空間衝撃波に対する応答過程について基本過程を明らかにすることができた。対流による輸送モードの限界と内部磁気圏電子の異常な分布を推定した。太陽風から内部磁気圏に至るエネルギーの流れを明らかにした。ホイッスラーモードコーラス波動及びEMIC波動が励起可能な時空間領域がサブストームと惑星間空間衝撃波に対してどのように変わるのか、という問題については検討を進めている。粒子移流シミュレーションに与える外部境界条件を適切に与えることが課題である。粒子シミュレーションを援用することや経験的な電子の分布関数を与えるなどの方法で解決を目指したい。
サブストームをエネルギーと物質輸送の観点で理解し、内部加速説における種電子のエネルギー源を探る。ホイッスラーモードコーラス波動及びEMIC波動の励起可能領域の提示とその検討を進める。グローバルMHDシミュレーションと移流シミュレーションを組み合わせ、惑星間空間衝撃波およびサブストームに対する内部磁気圏電子の応答過程を包括的に理解する。グローバルMHDシミュレーションの場の中で移流シミュレーションを時、粒子シミュレーションを援用することで求めた外部境界条件を与える。プラズマ圏から放射線帯に至る広いエネルギー範囲について計算結果と人工衛星による観測結果を比較し、計算結果の妥当性を検証する。
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