本研究では、地球惑星磁気圏における 0.1eV - 100 eV のエネルギー範囲の粒子観測を念頭に、イオンエネルギー質量分析器の開発を行う。本観測器は 0.1eV 程度の低いエネルギー帯のイオン観測をターゲットに含んでいる。 平成27年度は計算機シミュレーションを用いた観測器設計を行った。静電エネルギー分析部の極板形状・配置を工夫するとともに、質量分析技術として用いられてきた飛行時間分析 (Time-Of-Flight) 法を改良した。その結果、小型形状を実現しつつ、感度を大きく損なわないセンサー形状を得ることができた。また、得られた計算機シミュレーション空間内の形状を基に実際の観測器構造設計を行った。放電を抑制するための電極間距離の確保、視野を阻害しないようなケーブルの這いまわしなどに留意し、組み上げることが可能な筐体・電極設計を得ることができた。 平成28年度は得られた設計形状を基に試作された観測器センサー部を用い、イオンビーム照射試験を行った。その結果、エネルギー分解能、角度分解能、質量分解能とも設計に即した性能を有していることを確認した。また、紫外線照射試験を行い、1AU (太陽-地球間距離) における太陽紫外線強度で紫外線が観測器に直入射しても問題ないレベルであることを確認した。 平成29年度は製作した観測器を JAXA 宇宙科学研究所の観測ロケット SS520-3 に組み込んでのインターフェース試験を行った。そして、機械的、電気的インタフェースともに問題ないことを確認した。
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