本研究では、近年進展の著しい低温領域の熱年代学を複合的に用いて、東北日本弧における長期削剥速度を求めることを目指している。(U,Th)/He法とフィッショントラック法を用いた分析の結果、以下の事実が明らかになった:(1)東側部分にあたる前弧域では、およそ50Ma程度またはそれより古い冷却年代を示す。(2)西側部分にあたる背弧域では、年代値は比較的若くおよそ10-5Ma程度を示す。(3)中央部分にあたる奥羽脊梁地域では年代値は最も若く、(U-Th)/He法ではおよそ1-2Ma程度を示す。これらの結果は、上記3つの地域において、隆起-削剥-冷却史が大きく異なることを強く示唆する。
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