研究課題
地震時の断層滑りによる摩擦発熱は,間隙水の加熱-加圧により,著しい強度弱化(thermal pressurization)を引き起こす.同じく摩擦発熱によって引き起こされる粘土鉱物の脱水反応は、水を鉱物外に放出するため,この弱化機構を劇的にアシストし,滑りを増大させる可能性がある.そこで,本研究では,粘土鉱物と滑り量増大の関係に着目し,断層試料の各種分析と脱水反応の化学反応速度論パラメータの決定,破壊伝播の動力学的解析などを通して,粘土鉱物から放出される水がプレート境界浅部での断層滑り増大に与える影響の解明を目指している.本研究課題の初年度(H27年度)では,2011年東北地方太平洋沖地震のプレート境界断層の掘削試料と1994年東南海地震の震源断層(スプレー断層)の掘削試料において,粉末X線回折法とRockJockプログラムを組み合わせた鉱物組成の定量分析,熱重量-示唆熱走査熱重量同時測定装置を用いた脱水の反応速度論の決定および熱物性の測定を実施した.さらに,連携研究者(谷川博士)によって,同試料の水理特性(透水係数・貯留家椅子)と摩擦係数の計測が実施された.以上の情報は,プレート境界での断層滑りの数値解析を実施するために不可欠なものであり,今年度は研究計画通りの進捗であったと言える.H28年度には,実際に数値解析に取り組み始め,上述の通り,粘土鉱物から放出される水がプレート境界浅部での断層滑り増大に与える影響の解明を目指す.
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」にも記述したように,当初の計画通り,2011年東北地方太平洋沖地震のプレート境界断層の掘削試料と1994年東南海地震の震源断層(スプレー断層)の掘削試料において,粉末X線回折法とRockJockプログラムを組み合わせた鉱物組成の定量分析,熱重量-示唆熱走査熱重量同時測定装置を用いた脱水の反応速度論の決定および熱物性の測定を実施し,さらに,連携研究者(谷川博士)によって,同試料の水理特性(透水係数・貯留家椅子)と摩擦係数の評価を実施した.以上,H28年度に実施予定のプレート境界断層の滑り挙動の数値解析に必要な全情報を取得できたため,H27年度は順調に研究を遂行したと言える.
当初の予定通り,H27年度に取得した011年東北地方太平洋沖地震のプレート境界断層と1994年東南海地震の震源断層(スプレー断層)の物質科学的な実測値を用いて,プレート境界断層の滑り挙動の数値解析を実施する.
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Geophysical Research Letters
巻: 42 ページ: 1-8
10.1002/2015GL063195
Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 16 ページ: 1-21
10.1002/ 2014GC005622