研究課題
台湾チェルンプー断層における小断層解析の結果、水平な圧縮応力場と垂直な圧縮応力場の二種類に分類されることが分かった。これは、東北地震前後に見られた応力変化と同様であり、地震サイクルに伴う応力変化である可能性がある。また、事前研究で得られていた四国白亜系四万十帯における小断層解析の結果とも類似しており、過去の地震断層にもこのような地震サイクルに伴う応力変化が一般的に記録されていることを示唆している。この台湾チェルンプー断層の古応力の変化とストレスポリゴンを組み合わせることで、応力サイズの制約を行った。その結果、地震前が地震後より大きな応力サイズが制約された。これは、地震で応力が解放されたことと調和的であり、先の古応力変化が地震サイクルに伴う変化であるとする解釈をサポートする。また、地震後の応力サイズはチェルンプー断層掘削計画の掘削孔物理検層から得られた応力サイズとも調和的であった。さらに、分類された古応力に対応する小断層の位置が唯一わかっている台湾チェルンプー断層掘削コアを対象に、対応する小断層を採取した。その表面ラフネスを3次元顕微鏡で取得し、ラフネス解析を行った。ラフネス波形をフーリエ変換し、波長に対するパワースペクトルデンシティーのプロットからハースト指数を取得した。ハースト指数は1より小さく、かつ地震前後では変化しないこと、地震前の方が地震後よりもパワースペクトルデンシティーの絶対値は大きいことが分かった。これは、波長に対する振幅の分布が一様のまま変位とともにラフネスが小さくなっていることを示している。また、先行研究によるモデルによれば、ハースト指数が1より小さいことは、地震サイズに応じて応力降下が変化することを示唆している。また、新たな付加体の対象地域として予察的にニュージーランド・トワレッセコンプレックスの小断層解析調査を行った。
2: おおむね順調に進展している
断層位置がはっきりしている唯一の例である台湾チェルンプー断層に注力した嫌いはあるが、応力方位、応力サイズ、断層ラフネス解析といった一連のルーチンの見通しが立ったと言える。また、当初の目的である天然の岩石からより物理的なモデルへ適応できる定量的な物理量を取得したことの意義は大きい。また、当初対象地域としていなかった新たな付加体の対象としてニュージーランド・トワレッセコンプレックスを対象とし、Victoria大学のTim Little教授と共同研究を行った。
今後は、他の沈み込み帯においても同様のルーチンを行い、時空間的な一般性を追求していく必要がある。具体的には深部四万十帯である横波メランジュ、浅部四万十帯である沖縄嘉陽層、また、新たな研究対象地域として三畳紀のニュージーランド・トワレッセコンプレックスを対象として同様の検討をしていく。また、この科研費をもとにした国際共同研究加速器金(国際共同研究強化)を取得し、陸上付加体のみならず、海洋付加体においても同様の検討を行うこととしており、その研究も進めていく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 12件) 図書 (1件)
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