研究課題
当該年度においては、炭酸塩置換態硝酸の分析法を確立するために必要となる、酸処理等の前処理工程を行う実験系の立ち上げを行った。硝酸の混入を防ぎバックグラウンドの硝酸の濃度を可能な限り下げるために、硝酸フリーの実験室を確保し、硝酸除去フィルターを取り付けた超純水製造装置を設置したクリーンドラフトチャンバーを含む、炭酸塩置換態硝酸の前処理工程に特化させた実験系を立ち上げた。またバックグラウンドの硝酸を除去するための分析機器洗浄法を考案して、実験系におけるバックグラウンドの硝酸の濃度測定に着手した。また本研究においては、分析の直接の対象となる炭酸塩鉱物の結晶格子中に含まれる炭酸塩置換態硝酸と、岩石の流体包有物中に含まれている硝酸とを、酸処理に先立ち分離する必要がある。当該年度においては、この二種類の硝酸を分離するための装置の作成にも着手した。また当該年度は、西オーストラリア・ピルバラ地域東部にて行った地質調査で採集した太古代後期の炭酸塩岩について、炭酸塩中に含まれる硝酸の含有量の測定に着手した。さらに、続成過程における炭酸塩置換態硝酸への混入の原因となり得る、岩石中に含まれるケロジェンの有機窒素について詳細な分析を行った。層厚100 m以上の地層から採集した岩石試料について粉末を作成し、塩酸処理を施した。炭酸塩を除去した後に残渣の元素分析を行い、ケロジェン中の有機炭素・窒素の含有量およびその同位体比の測定を行った。特に岩石試料の有機窒素含有量から、炭酸塩置換態硝酸の分析に適した試料を選定した。
3: やや遅れている
岩石試料中にごく微量含まれる炭酸塩置換態硝酸の分析に必要な実験系の立ち上げに、当初想定していた以上の時間を費やした。この主たる原因の一つは、本研究の前処理工程を行うための実験室が含まれる機構内の実験棟の全面的な改修工事が、当初の予定よりも数カ月以上遅れたことである。同じ実験室内に新設された他のドラフトチャンバーも考慮した実験室全体の吸排気バランスの調整、実験棟全体に給水される超純水ネットワークの構築、改修工事期間中に舞うダストなどの混入の影響などを考慮した結果、本研究課題のみを実験棟全体の改修工事から独立させて進めることは著しく困難であった。大幅に遅延した実験棟の改修工事終了後に、本研究の炭酸塩置換態硝酸分析用のラボおよび実験系の立ち上げを完了した。
当該年度にて、炭酸塩置換態硝酸の分析のために必要な実験系を立ち上げた。今後は、天然の地質試料の分析を行う。地質試料中の炭酸塩置換態硝酸を回収して、その窒素同位体比の測定を試みる。
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Journal of Asian Earth Sciences
巻: 135 ページ: 70-79
10.1016/j.jseaes.2016.12.009