研究課題
小笠原諸島のカタマイマイ類でRAD-seqによる系統推定を行った結果、従来のニッチ分化による種分化や平行的な適応放散の仮説が支持された。以上の結果から島嶼域において島ごとの隔離以外の要因、特に生態的な要因が種分化に強くかかわっている可能性が示された。また小笠原ではウズムシ類など外来種の影響により、ごく最近適応的な分化が生じていることが示された。炭素安定同位体比の分析によって、過去の種のニッチ利用の進化を明らかにした。その結果、1万年というごく短い期間に、植生環境の違いに適応した集団が分化し、形態的な分化も生じたことが示された。これらは共存している場合もあり、ニッチ分化による種分化を示すと判断できる。これらのデータをもとに、種分化のプロセスについてのモデルを構築し、計算機シミュレーションによって、適応放散の過程を調べた。その結果、移動性が比較的高く、環境の異質性のスケールが大きい環境で、上記のような種分化と適応放散が生じることが推定された。これは適応放散を生じたグループの性質とおおむね調和的であった。琉球列島の陸貝の年代測定の結果から、この地域では4000-2000年前以降に、種の絶滅イベントがあり、種構成が変化したことがわかった。宮古島などに生息していたアツマイマイ属は、この時期に絶滅したと考えられ、外来種の侵入の影響がその要因と推定される。琉球列島のオナジマイマイ系の分子系統解析を行い、その種分化や地理的分化の多くの部分が、琉球列島が形成される以前にすでに形成されていることを示した。また島ごとの種構成や変異の地理的分布は、隔離による分化よりもむしろ海流による集団や種の分散によって説明することができた。以上の結果は、大陸島では島ごとの隔離が種分化をもたらすという従来の見解と大きく異なる結果である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Molluscan Studies
巻: 84 ページ: -
10.1093/mollus/eyy003
Evolution Letters
巻: 1 ページ: 282-291
org/10.1002/evl3.31