今年度の野外調査は,モンゴル西部ゴビ・アルタイ県のBayan Gol地域,Tsagaan Gol地域,Salaany Gol地域で行った. Bayan Gol地域では,Tsagaan Oloom層中のストロマトライト(とくにBoxonia)礁の野外での産状(規模や内部組織の層序的な変化)を確認し,微生物岩の微視的な特徴と成因との関連性を明らかにした. Tsagaan Gol地域では,Bayan Gol地域と同層準のストロマトライト礁よりも上位層準の岩相層序を確立し,Bayan Gol地域との対比を行った.今までのところ,石灰質微生物類が形成に関与した微生物礁(スロンボライト礁など)は確認できていないが,ウーライト層中に分岐状のストロマトライトが発達する層準が認められた. Salaany Gol地域では,Bayan Gol層の岩相層序を確立し,Bayan Gol地域の当該層との対比を行った.EpiphytonやRenalcisで代表される石灰質微生物類が形成に関与する小規模なスロンボライト礁(幅数m程度)の他,オンコライト(直径数cm前後)の密集層が認められた.オンコライトの内部は必ずしもラミナ組織を示さず,斑点状を呈する場合がある.内部で石灰質微生物類(分類名は検討中)が認められる.今後,オンコライトの形成要因を堆積環境とともに考察していく必要がある.Salaany Gol層では,古杯類-石灰質微生物類礁の産状や礁相の層序学的な変遷を検討した.野外で,古杯類の多様な成長形態やセメント充填堆積物が確認できた. これらの成果の一部は,日本古生物学会2017年年会,日本地質学会第124年学術大会の場で発表した.
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