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2016 年度 実績報告書

断層内の非晶質珪酸塩の構造と成因

研究課題

研究課題/領域番号 15H03746
研究機関北海道大学

研究代表者

亀田 純  北海道大学, 理学研究院, 准教授 (40568713)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード断層ガウジ / 非晶質 / X線構造解析
研究実績の概要

本研究は、断層におけるケイ酸塩鉱物の非晶質化過程を原子レベルで明らかにすること、またその知見を天然の断層試料の解析に用いることで、断層が経験した地震性すべり過程の詳細を復元することを目的としている。
本研究では、断層ガウジの主要構成鉱物であり、また比較的簡単な構造を有するカオリン鉱物(カオリナイト)を対象として実験を行っている。昨年度は、カオリナイトをメカニカルに粉砕処理した粉末を用いて通常のXRD分析や熱分析を行い、およそ20時間の粉砕処理により回折ピークがほぼ消失することを確認した。また、こうして段階的に非晶質化した物質を対象として、Ag線源を用いたX線散乱強度測定を行い、得られたパターンのRDF解析を行った。昨年度の大きな問題点として、散乱強度補正が十分に行えなかったことが挙げられ、このため信頼性のあるRDFが得られなかった。この問題を解決するため、今年度は新たにMo線源を用いた散乱実験を行い、すべての試料についてRDFの再解析を行った。その結果、熱処理と粉砕処理では、得られる非晶質物質の構造に明瞭な違いがあること、特に粉砕処理においては3.6~5.8Åの短・中距離構造の乱れが顕著であることが分かった。これらは、隣り合うカオリナイト基本層を連結させているAl-Si、Al-Al、Si-Siのリンケージに相当していると考えられ、つまり層間を構成する水素結合の選択的な破壊を示唆している。このことは、カオリナイトの脱水温度が低温側へシフトするという熱分析の結果によっても支持される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度の実験により、メカニカル処理によるカオリナイトの非晶質化過程の実態が明らかになってきた。特に、メカニカル処理に伴うカオリナイトの水素結合の大きな乱れは、断層ガウジ試料の分析を通して、断層運動によって断層物質が被るメカニカル作用の強度を見積もるための重要な指標になりうるものと期待できる。また、こうした水素結合の乱れは、カオリナイトの脱水反応をより低温で促進する作用があるため、断層の動的弱化(脱水作用とその水の熱膨張による断層強度低下)を駆動する重要な因子となっている可能性があり、断層のすべり挙動を考えるうえでも重要な成果が得られたと考えられる。

今後の研究の推進方策

昨年度に実施したRDF解析により、メカニカル処理によってカオリナイトの層間構造が大きく破壊されている様子が明らかになりつつある。この構造の乱れをより詳細に解析するため、DISCUSを用いて欠陥を有するカオリナイトの散乱パターンのシミュレーションを行い、実験パターンが再現されるかを検討する。また昨年度後半には、カオリナイトの比較対象として緑泥石を用いた熱分解実験などを開始した。この結果から、カオリナイトと緑泥石のXRDパターンの温度変化は、断層の温度履歴解析に有効であることが明らかになりつつあるため、実験と並行して各地の断層ガウジ試料のXRD解析も進める予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Alteration and dehydration of subducting oceanic crust within subduction zones: implications for decollement step-down and plate boundary seismogenesis2017

    • 著者名/発表者名
      Jun Kameda, Sayako Inoue, Wataru Tanikawa, Asuka Yamaguchi, Yohei Hamada, Yoshitaka Hashimoto and Gaku Kimura
    • 雑誌名

      Earth, Planets and Space

      巻: 69 ページ: 52

    • DOI

      10.1186/s40623-017-0635-1

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Evolution of the Median Tectonic Line fault zone, SW Japan, during exhumation2017

    • 著者名/発表者名
      Norio Shigematsu, Masao Kametaka, Noriyuki Inada, Masahiro Miyawaki, Ayumu Miyakawa, Jun Kameda, Tetsuhiro Togo, Koichiro Fujimoto
    • 雑誌名

      Tectonophysics

      巻: 696 ページ: 52-69

    • DOI

      10.1016/j.tecto.2016.12.017

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Opal-CT in chert beneath the toe of the Tohoku margin and its influence on the seismic aseismic transition in subduction zones2017

    • 著者名/発表者名
      Jun Kameda, Atsushi Okamoto, Kiminori Sato, Koichiro Fujimoto, Asuka Yamaguchi, and Gaku Kimura
    • 雑誌名

      Geophysical Reserach Letters

      巻: 44 ページ: 687-693

    • DOI

      10.1002/2016GL071784

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Source and sink of fluid in pelagic siliceous sediments along a cold subduction plate boundary2016

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi, A., Hina, S., Hamada, Y., Kameda, J., Hamahashi, M., Kuwatani, T., Shimizu, M., Kimura, G.
    • 雑誌名

      Tectonophysics

      巻: 686 ページ: 146-157

    • DOI

      10.1016/j.tecto.2016.07.030

    • 査読あり
  • [学会発表] 南海トラフ地震の震源域に迫る2016

    • 著者名/発表者名
      亀田純
    • 学会等名
      日本鉱物科学会
    • 発表場所
      金沢大学(石川県・金沢市)
    • 年月日
      2016-09-24 – 2016-09-24
    • 招待講演
  • [学会発表] 日本海溝におけるチャートの変形・続成過程2016

    • 著者名/発表者名
      亀田純、岡本敦、佐藤公法、藤本光一郎、木村学
    • 学会等名
      日本地質学会学術大会
    • 発表場所
      日本大学(東京都・世田谷区)
    • 年月日
      2016-09-11 – 2016-09-11
  • [学会発表] Interparticle forces between smectite platelets from natural fault gouge2016

    • 著者名/発表者名
      Kameda, J. and Inaoi, C
    • 学会等名
      International Symposium on Crustal Dynamics 2016: Unified understanding of geodynamic processes at different time and length scale
    • 発表場所
      Takayama City Hall (岐阜県・高山市)
    • 年月日
      2016-07-21 – 2016-07-21
    • 国際学会
  • [学会発表] Exchangeable cation composition of the smectite-rich plate boundary fault at the Japan Trench2016

    • 著者名/発表者名
      Kameda, J., Inaoi, C., and Conin, M.
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2016年大会
    • 発表場所
      幕張国際会議場(千葉県・千葉市)
    • 年月日
      2016-05-23 – 2016-05-23

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公開日: 2018-01-16  

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