研究実績の概要 |
本年度にはこれまでに収集した天然のマグネタイト(Fe3O4)およびチタノマグネタイト(Fe3-xTixO4)の中から,組成分析とX線構造解析によりチタノマグネタイト単結晶と確認できた試料について共鳴散乱実験を行った.試料には,宮城県蒲沢鉱山産の天然のチタノマグネタイト(Ti0.31Fe2.69O4)を用いた.Fe2+, Fe3+の同種異価イオンを区別するため,FeK吸収端近傍のE = 7.1082 keVのX線を用いて回折データ測定を行った.実験は高エネルギー加速器研究機構の放射光施設Photon Factoryにて行い,回折データの測定にはAFC4軸回折計を用いた.Fe2+, Fe3+の原子散乱因子の異常分散項の値は,FeO粉末,Fe2O3粉末のXANESスペクトルよりkramers-kronigの関係を用いて求めた.解析の結果,陽イオン分布は、[Fe3+1.00]A site [Fe3+0.38 Fe2+1.31 Ti4+0.31]B siteと求められた. また,チタノマグネタイトは磁気鉱物であり,その磁気特性はスピネル構造中の4配位のAサイトと8配位のBサイトにおけるTi4+, Fe2+, Fe3+イオンの占有率に依存することが知られている.今後本研究を放射光X線を用いた磁気構造解析へ発展させてゆくために,円偏光とX線共鳴磁気散乱強度の相関について検討を行った.磁気応答の強い参照試料として,フェリ磁性のGd3Fe5O12を用いた.FeK吸収端近傍波長で測定したデータを用い,円偏光を入射して非対称度における共鳴磁気散乱と非共鳴磁気散乱の寄与を検証した.
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