研究課題
地球中心に位置する固体金属でできた内核には特徴的な地震波速度の異方性が存在する。この異方性は構成物質の変形によって発達する選択配向によるとの考えがあるが、実際の内核物質の物質科学的研究は不十分であった。本研究では高温高圧変形実験と放射光その場観察技術を集結することによって、内核の構成物質であるhcp鉄の変形誘起選択配向を解明することを目的とする。平成29年度までの研究では、hcp鉄の13~17GPa、723Kでの一軸圧縮・引張変形実験および単純せん断変形実験を行い、実験中に発達する結晶選択配向をその場観察した。その結果、圧縮実験では圧縮方向に<0001>が、引張実験では引張方向に<121_0>が、単純せん断変形実験ではせん断方向とせん断面法線方向にそれぞれ<121_0>と<0001>が配向することが分かった。これらの結果を総合すると、実験における主要すべり系は底面すべりである可能性が高いと結論づけられる。また、実験で得られた選択配向をもとに計算すると、内核条件での地震波速度異方性は最大で6%にも達し、このメカニズムが内核異方性を十分説明できる可能性を持つことが明らかになった。以上の実験では、平成27年度に本課題で大型放射光施設SPring-8のBL04B1に導入した単色X線透過像撮影システムが利用されているが、このシステムによって従来よりも格段に効率的な差応力と歪の測定が実現されている。上述の研究の主要な成果は、地球惑星科学分野の権威ある国際学術雑誌であるEarth Planetary Science Letters誌に発表されている。
2: おおむね順調に進展している
「研究の実績の概要」に記したとおり、予定していた研究を順調にすすめている。また、平成27年度に導入したX線投下像撮影システムも順調に稼働している。
今後は、より幅広い温度圧力条件での変形実験をすすめ、hcp鉄の結晶選択配向に対する温度、圧力の影響を調べていく。同時に変形の力学特性の温度・圧力・ひずみ速度依存性を明らかにしていきたい。これらの実験では、高エネルギー加速器研究機構、PF-AR、NE7Aに設置されたD111型ガイドブロックが大きな力を発揮することが期待される。また、得られる結果をまとめ、関連学会での発表、投稿論文での発表を行なっていく。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件)
Earth and Planetary Science Letters
巻: 490 ページ: 151-160
https://doi.org/10.1016/j.epsl.2018.03.029
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
巻: 112 ページ: 346~358
https://doi.org/10.2465/jmps.170309