研究実績の概要 |
ストロンチウム安定同位体分析法の改良: ストロンチウムのイオン化を阻害するSrレジン由来の有機物を除去するために、Srレジン+合成吸着剤のハイブリッドカラムを作製した。 カルシウム化学分離法の改良: 妨害イオンをできるだけ除去しながらカルシウムフラクションをロスなく回収するために、陽イオン交換樹脂Ag50W X12カラム、DGAレジンカラム、REレジンカラムを用いた3段階の化学分離を行った。DGAおよびREカラムにおいては、有機物を除去するためにレジン+合成吸着剤のハイブリッドカラムとした。 カルシウム同位体測定方法の開発: 熊本大学に導入された質量分析計は、つくば科博の質量分析計よりもファラデーコレクターの可動範囲が広い。そこでChen et al. (2011)のファラデーカップ構成を参考にして、ズームレンズを使用しないスタティックモードにて標準試料等を測定した。44Caのシグナルが~1E-11Aになるまでフィラメント電流をあげ、47Tiをモニターして、妨害ピーク46Ti, 48Tiを見積もった。ところが、質量領域47ー50をスキャンしてみると、47/49比が常に天然の推奨値よりも低く、質量数47のシグナルはチタンだけではないことが判明した。カルシウム標準試料NIST SRM 915a, 915bを測定したところ、誤差の範囲で文献値と一致していた。 Allende棒状カンラン石コンドリュールのカルシウム同位体分析結果 マグネシウム同位体を測定した試料の残りを用いて、カルシウム同位体分析用の試料を準備した。Ti-46, -48同重体の妨害については、イオン強度が小さいことから無視できるとすると、カルシウム同位体組成は、分析精度の範囲内で標準試料と差がないことが判明した。このことは、難揮発性元素に富む棒状カンラン石コンドリュール前駆物質に先太陽系物質の寄与は小さいことが示唆された。
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