研究課題
本研究の目的は、光化学反応途中における分子内原子核の運動量分布の変化、すなわち過渡状態分子振動波動関数が運動量空間において時間発展する様をスナップショット的に観察する新規分光手法を開発・確立することである。この目的のために、原子運動量分光を、過渡不安定状態をも対象とする手法へと展開を図り、化学反応を追跡するのに必要な時間分解能(1 ps)ならびに原子運動量分光に必要なエネルギー分解能(約0.5 eV)の両者の要件を満たす時間分解原子運動量分光装置を試作する。本年度は、昨年度までに立ち上げた超高感度マルチチャンネル型原子運動量分光装置の時間分解計測化を試みた。具体的には、フェムト秒レーザーを励起源とするフォトカソード型パルス電子銃を、本分光装置に特化した形に開発し、予備実験を開始した。その結果、フェムト秒レーザーを二次元検出器側から電子エネルギー分析器の中を通してフォトカソードに照射するという、本分光特有の実験配置のため、レーザーによる予期せぬ大量のノイズが発生してしまい、装置の電圧条件を大幅に変更せざるを得なくなった。電子検出のタイミングやアナライザーのスリット幅の調整、および減速レンズ電圧の最適化など試行錯誤を経て、予備実験開始当初は約9 eVという劣悪なエネルギー分解能を、1.5 eVにまで大幅に改善することができ、目標とする0.5 eVまであと一歩のところまで来ている。一方で、二原子分子の実験データから分子内原子の運動量分布を抽出する手法を開発した。これにより、並進運動に起因したバンド位置の散乱方位角依存性および装置関数を考慮することで、分子内原子運動のコンプトンプロファイルを空間平均したものを実験的に決定できることを実証した。以上の研究実績は、本分光の時間分解計測化により反応中の分子内原子運動の可視化が実現可能であることを強く示唆する、大きな成果である。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Physics B: Atomic, Molecular and Optical Physics
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巻: 52 ページ: 065205~065205
10.1088/1361-6455/aafdc1