Ⅰ.電極界面に形成される電気二重層内の水分子の構造を明らかにするために、超高真空中においてを電解質イオンおよび水分子を導入し電極界面構造を再現し、赤外分光測定を実施した。Ag(100)表面にあらかじめ水分子を吸着させておき、その後Csを表面に導入した。これまでのアルカリ金属および水分子を共吸着した系では、アルカリ金属が表面に直接吸着しており、実際の電極界面の構造とは異なっていた。しかし、本研究における導入法では、アルカリ金属イオンは水和した状態で、表面に直接吸着しておらず、電極界面と類似の構造を再現することができた。 Ⅱ.真空中において水分子は、金属表面に200 K程度以下の低温で表面に吸着することが知られている。さらに140 K程度以下では、氷のような3次元構造に成長する。本研究では、200 K以上および高い水分圧で、Pt(111)表面における水の挙動を赤外分光により観測した。水の分圧を高くすることにより220 K程度でも吸着水が存在し、さらに既報の氷とは異なる赤外スペクトルが得られた。このスペクトルは気液界面の和周波スペクトルと類似しており、液体に近い状態であることが分かった。 Ⅲ.電気二重層における電位プロファイルを明らかにするために、電解質イオンが特異吸着しないグラフェン電極を用いて界面水構造をin-situX線回折により決定した。グラフェン電極上では、水分子がbi-layer構造をしており、電極電位に依存して水の層間隔が変化する。水分子の配向角の変化によるものであり、水の電気双極子モーメントからbi-layer構造内の電位勾配を見積もった。bi-layer内には、印加した電位に相当する電位勾配が形成されており、電気二重層の微小領域で電位勾配が形成されていることがわかった。
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