研究課題
本研究は、分子間相互作用解明の典型的なモデルとして気相分子クラスターを取り上げ、先端的光源技術を利用した量子状態制御という独自の方法論によって、分子間相互作用に関するエネルギーランドスケープの全貌を描くことを目的としている。研究最終年度である平成29年度の成果は以下の通り。1)本研究3年間にわたり、極短パルス光励起による量子状態のコヒーレンス制御法とイオンイメージング法を融合した新規計測の開発に取り組み、これまでに分光学的データが殆どない(N2)2を研究対象として、振動ならびに回転量子波束の生成と観測を行ってきた。解離生成物であるN2+イオンの空間配向分布が周期的に変動することを見出し、その変動の周期成分から振動や回転のエネルギー状態について情報を引き出せることを明らかにしてきている。今年度は、15N同位体種に対する観測も行うことによって、回転エネルギー準位に関する従来の帰属を確定するとともに、最もエネルギー的に不安定なスピン異性体に由来する信号を初めて帰属することができた。さらに、時間領域測定をより長時間まで延長することにより、周波数領域の分解能を向上させ、「時間領域の高分解能分子分光」とでも呼ぶべき新規計測技術として確立することができた。2)分子クラスターにおける結合エネルギーの決定は、分子間相互作用を実験的に研究する上で最も重要性が高い。本研究においては、ベンゼンと水素分子から構成されるクラスターについて重点的に取り組み、2波長共鳴イオン化と飛行時間型質量分析を組み合わせることによって、基底状態・第一電子励起状態・イオン状態の結合エネルギーの決定を行った。特に本年度は、重水素分子のクラスターを対象とすることにより、オルソとパラの2つのスピン異性体に対する結合エネルギーの決定に初めて成功した。当成果は、スピン異性体の結合エネルギー差を初めて定量的に特定したものである。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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