研究実績の概要 |
遷移金属元素を主成分として持つ複合電子系の構造、結合、分子物性、反応過程、触媒作用を電子状態理論計算に基づいて検討し、理論予測を試みた。6族金属間に6重結合を有する錯体のCASPT2研究をおこない、それらの合成のための配位子設計を理論予測し、また、混合原子価錯体である7族のMn(III),Tc(III), Re(III)、10族のNi(II), Pd(II), Pt(II)錯体のGMCQDPT計算からそれらの電子状態の局在性/非局在性を明らかにした。Metal-Organic-Framework (MOF)へのCO2やCOなどの気体分子の吸着について理論的研究を行い、相互作用構造と安定化エネルギーの関連を解明した。 H-H, C-H, O-H, Ph-NO2結合などのシグマ結合活性化反応の理論的研究を行い、反応機構と電子的過程を解明すると共に、遷移金属元素がどのように反応に関与し。重要な役割を果たしているのか、明らかにした。例えば、最近報告されたNi(0)錯体による芳香族炭化水素のC-H結合活性化は一般的なNi(0)への酸化的付加でなく、Ni(0)-アルケンへの酸化的付加であることを明らかにした。また、芳香族ニトロ化合物のクロスカップリング反応は最近実験分野で成功したが、その反応機構を解明し、特殊なホスフィンの使用が重要であることを明らかにした。Pd/Cuの競争的触媒作用によるクロスカップリング反応ではトランスメタル化が重要であるが、このトランスメタル化はsp3-C周りで立体反転機構で進行することを理論的に解明し、その理由に基づいて立体反転を行うための置換基を理論予測した。
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